京都・南座で「花形歌舞伎 特別公演 曽根崎心中物語」を上演している。映画「国宝」の劇中劇で登場し、ヒロインお初の「死ぬる覚悟が…」のセリフで、歌舞伎ファンだけではなく、全編を見たい!という映画ファンも駆けつけ、歌舞伎を見たことがない層も巻き込み、大入り満員となっている。
「曽根崎心中」は元々、近松門左衛門作の世話物浄瑠璃で1703年に初演。1953年に劇作家・宇野信夫が脚色し、中村鴈治郎(二代目)の平野屋徳兵衛、中村扇雀(四代目坂田藤十郎)の天満屋お初で上演。以後、宇野版で何度も上演されている。
今回は原田諒氏が潤色した「―物語」。お初=中村壱太郎と徳兵衛=尾上右近の「桜バージョン」と、お初=右近と徳兵衛=壱太郎の「松バージョン」と、役替わりで演じている。ラストの演出は違っているが、まさに「恋の手本となりにけり」とそれぞれに趣がある。
壱太郎のお初は艶やか。お家芸ということもあり、台詞の緩急、見せ方はさすがでグイグイと引き込まれる。縁の下の徳兵衛に「徳様は死なねばならぬ」と刃物に見立てて素足を差し出すシーンは、情念とエロティシズムが漂う。また徳兵衛を演じた場合、死に同意して首元に素足を当てる仕草に、それまでの葛藤が読み取れ、悲劇性を際立たせている。口跡がよく、非常に台詞が聞き取りやすく、声にも艶があり、和事の主人公にはピッタリ。
右近のお初は遊女でありながらも、徳兵衛がひかれてしまう可憐さを持つ。徳兵衛になると二枚目ぶりが際立ち、信頼していた人物にだまされたとわかったときの表情に、まっすぐな性格がにじみ出る。特に縁の下のシーンでは、誠実だが不器用な性格があらわれ、観客の胸を打つ。
今回、天満屋の内儀・お紋(尾上菊三呂)がお初に遊女としての性根を言い聞かせ、主人の惣兵衛(片岡仁三郎)がそれをかばうシーンがあり、当時の遊女の立場がわかりやすくなっている。
1日でお初と徳兵衛が入れ替わる2公演を、平然とやってのける2人のスゴさには驚かされるばかり。また初心者にもわかりやすいように、トークショー(対談)もあり、毎回工夫が凝らされている。
今回の監修をつとめた中村鴈治郎は「国宝」に出演し、歌舞伎指導も行った。壱太郎も吾妻徳陽の名で女形所作指導を行った。
そんな縁もあり、映画に主演した吉沢亮も観劇。公式Xに「京都南座にて #曽根崎心中物語 を観劇した本日の吉沢。特別対談コーナーでは #国宝 に触れてくださり喜久雄こと吉沢も、うひゃひゃと笑っていました。」とポスト。トークショーでは「 #南座で歌舞伎 撮影会にも張り切って参加 笑」と撮影する様子も。壱太郎も「『幕切れに感動した』と言ってくれた言葉も有り難かった」と吉沢の言葉を伝えた。