学歴詐称疑惑を巡り、地方自治法違反などの疑いで刑事告発された静岡県伊東市の田久保真紀前市長(56)の同市内にある自宅が静岡県警によって家宅捜索されたことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が17日、当サイトの取材に対し、“卒業証書”が保管されているとされる弁護士事務所への捜索など、今後の捜査の焦点について見解を語った。
田久保氏は東洋大除籍だったが、昨年5月の市長選で当選後、市広報誌のプロフィルなどで「卒業」と紹介したことで、学歴詐称疑惑が浮上。今回の家宅捜索は、前市長が当時の市議会議長らに「卒業証書」として見せた書類の任意提出を拒否したことなどを踏まえて強制捜査が必要と判断したとみられる。14日午前、田久保氏の自宅前にはブルーシートが張られて捜査員が出入りし、捜索終了後は押収物を入れたとみられる段ボール数箱などが運び出された。
小川氏は「捜査員が約15人、7時間もかけて行われており、相当に細かい家宅捜索だったと推測されます。メールやLINE等のやりとりについては、その内容を警察は既に入手している可能性もあると思いますが、本人が削除したものも含めてもパソコンやスマートフォン等も押収。家宅捜索、いわゆる“ガサ”をするといろいろな物が出てきます。『これは大丈夫だろう』と思っているような、“ひょんな物”から思わぬ証拠となるような物が出て来ることもある。今回押収した物は相当な量と聞いていますので、現在はそれらを精査しているところだと思います」と解説した。
その上で、改めて、小川氏は一連の流れを時系列で検証した。
「1月29日に前市長が警察に出頭したのですが、それが午後6時過ぎだった。警察が事情聴取を任意でする時は、午前中か、午後でも1時とか1時半といった早い時間帯から始めるのが普通です。警察が『夕方の6時から来てください』ということはあり得ません。おそらく、本人が『その時間しか空いていないから』ということで行ったのだと思いますが、まともに事情聴取を受けるつもりはなかったのだろうと私は思います。これも代理人弁護士に相談して『昼から行かなくてもいい。早く行くと、ずっと(聴取で)引っ張られる』といったことを言われたとも考えられます」と推測した。
続いて、小川氏は「2月12日に田久保氏側は『任意提出は拒否する』旨の回答書を出しましたが、警察側は翌13日の金曜日に『捜索差押許可状』という強制捜査の令状を裁判所に請求し発付され、14日に家宅捜索に着手したということになります」と付け加えた。
さらに、出頭以前にさかのぼって背景を分析した。
小川氏は「警察から弁護士事務所の金庫の中に入っている“卒業証書”とされている物を証拠品として任意に提出してもらえないかと要請していますが、田久保氏の出頭以前に、弁護人を務める福島正洋弁護士がテレビ局の取材に対して、この“卒業証書”について『押収拒絶権があるので出しません。家宅捜索も受けません』という話をしていて、その時点では前市長も弁護士が話した内容を了解していたわけです。ところが、出頭後、前市長側は『慎重に検討して回答する』として、『出さない』とは明言せず、言葉を濁して『慎重に…』となった。ここで拒否したらまずい…と弁護士も判断したのでしょう」と補足した。
福島弁護士は今回の家宅捜索を受け、都内で報道陣の取材に「想定していた。驚きはない」と話し、「卒業証書」は弁護士事務所で保管中であると改めて説明。刑事訴訟法が定める「押収拒絶権」に基づき「卒業証書」の差し押さえは許されないとの趣旨の文書を12日に県警へ提出したと明かした。
小川氏は「『家宅捜索は想定していた。驚きはない』と発言した福島弁護士ですが、『卒業証書』についても、当初は『出さない』と言っていたが、実際は『出さない』ではなく、『出せない』が本心ではないか。また、福島弁護士は『(卒業証書は)まだ事務所にありますので、今後の捜査が進展していく中で、最後まで出さないかというと、まだ検討中であります』という曖昧な回答をしている。今後は弁護士事務所の捜索も考えられます。それは警察や検察が必要だと考え、裁判所に令状を請求して実際に令状が出るかどうか、多少のハードルは考えられるが、強気の捜査も必要だと考えます。ここまで来れば、自宅だけでなく事務所の捜索も視野に入れる必要がある」と指摘した。
最後に、小川氏は「“卒業証書”については『偽造有印私文書行使罪』となり、他に告発されている地方自治法違反などより罪は重い。一連の捜査を通して外堀を埋めていく作業が続いていくでしょう。これまで『手ぬるい』などと世論で批判されていた県警の本気度がうかがえます」と今後の動きに注目した。