転職は人生の中で大きなイベントのひとつだろう。希望する企業に応募をしても「今回はご縁がなかったということで」という定型文のようなお断りメールが届くことも多々ある。
しかも転職の回数が増えていくことで、企業からは「忍耐力がない」「飽きっぽい」というレッテルを貼られることもある。何度も転職している人は、このようなレッテルが怖くて面接でも消極的になってしまうようだ。
では転職回数が多い人は、正社員への道が険しくなってしまうものなのだろうか。多くの職歴を「物語」としてプラスに伝える方法について、キャリアカウンセラーの七野綾音さんに話を聞いた
ー企業は、転職回数が何回以上あると「多い」と判断し、警戒しますか?
私が見てきた現場感覚では、20代で2社前後、30代で3社前後の経験社数だと、採用担当者が職歴の流れを把握しやすく、5回、7回と転職回数が増えていくにあたって、転職を決断するにあたった背景事情と、次の会社・仕事を選択する理由とその思考過程を丁寧に確認する傾向はあると感じます。
しかし、転職回数が5回以上あるからといって、それだけで不採用になるわけではありません。重要なのは回数そのものではなく中身です。
ー採用担当者が、回数以上に懸念している点とは何でしょうか?
転職回数だけではなく、一社の在籍期間の長短や、転職の傾向から見えるキャリアの方向性なども、長期的に活躍してもらえるかを見極めるための重要な判断要素となります。
例えば転職回数はそこまで多くは無いけれど、短期離職が続いているケースや、経験している業界や職種に連続性が見えないケースについては、採用担当者が短期離職の理由、キャリアビジョンについて深く掘り下げることが多いです。
だからこそ、退職理由はもちろん、次の就職までの動機を丁寧にストーリーとして語れるようにしておくことが重要です。
ー転職回数が多くても歓迎される業界や職種、企業のタイプはありますか?
一般的に、「転職回数が多いこと」自体がポジティブに評価される業界はほとんどありません。
ただし、その転職が「スキルアップ」や「キャリアの発展」に必要なことが明確であれば話は別です。例えば、業界や職種が一貫しており、転職するたびに仕事で求められるスキルが高度になっている、担当する業務範囲や裁量が広がっている場合です。
また、「職種を変える転職」を繰り返している場合は、職種を変えることで自身のキャリアをどのように積み上げていこうとしているのかを整理しておく必要があります。これが論理的に伝えられないと「迷走しているのではないか」と受け取られる可能性があると感じます。
ー多くの職歴を、マイナスではなく魅力的に見せるための手法はありますか?
職務経歴書を単なる「社名の年表」にせずに、退職と入社の間にある「心の動き(ストーリー)」を言語化することが大切です。
仮に過去、漠然と条件だけで仕事を選んでしまって理想と現実が違ったというような経験があったとします。しかし、それを隠して取り繕うような受け答えをしてしまうと、採用担当者は違和感を覚えます。
むしろ、「当時は私生活を充実させるために条件重視で事務職を選択したが、実際に働く中で自分はお客様と直接かかわりをもてる仕事にやりがいを感じていたことに気づいた。」と正直に伝えるほうが、採用担当者も腑に落ちます。
私自身、多くの求職者と向き合う中で、転職回数が多いかどうか以上に、「なぜその選択をしたのかを自分の言葉で説明できるか」が大切だと思う場面を何度も見てきました。
過去の選択を今の意欲にどうつなげているか、その納得感のあるストーリーを示すことができれば、多くの経験は「迷い」から「成長の軌跡」へと変わるはずです。
◆七野綾音(しちのあやね)キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント
やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。