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「安楽死」テーマの映画公開、主演俳優に聞く「制度として描いた問題作」巨匠監督と名脚本家が初タッグ

北村 泰介 北村 泰介
主演映画「安楽死特区」のポスターを前に「安楽死」というテーマについて語る俳優の毎熊克哉=都内
主演映画「安楽死特区」のポスターを前に「安楽死」というテーマについて語る俳優の毎熊克哉=都内

 安楽死を決意した人間と周囲の人たちの愛と苦悩を描いた社会派映画「安楽死特区」が23日から全国順次公開される。1970年代から半世紀以上にわたって数々の力作を世に送り出してきた高橋伴明監督(76)と、松田優作さん主演の「野獣死すべし」(80年公開)などで知られる脚本家・丸山昇一氏(77)が初タッグを組んだ作品としても注目される。主演俳優の毎熊克哉(38)に「安楽死」という重いテーマと向き合った思いを聞いた。

 同作は「安楽死法案」が可決された近未来の日本を舞台とし、毎熊は若年性パーキンソン病で余命半年と宣告されたラッパーを演じる。そのパートナーとなる女性ジャーナリスト役に大西礼芳、安楽死と向き合う夫婦役に平田満と筒井真理子、特命医役に加藤雅也、板谷由夏、奥田瑛二、70年代から高橋組の常連俳優である下元史朗、さらに余貴美子、友近、鈴木砂羽ら個性的なキャストが脇を固める。

 毎熊にとって2025年7月公開の主演映画「『桐島です』」に続く高橋監督作品。「痛くない死に方」(21年公開)で尊厳死を描いた高橋監督は、最新作で毎熊が演じる人物像について、「安楽死という大きなテーマに対抗するには自分の言葉を持っている人物でないと説得力がないと考え、回復の見込みがない難病を患っている章太郎(毎熊演じる主人公)をラッパーという設定にした」と、丸⼭氏との間で決めた経緯を説明した。

 また、原作者の医師・長尾和宏氏は「尊厳死と安楽死は別物です。尊厳死は社会的に容認されつつある一方、安楽死は日本ではそれを望む市民が増えているにも関わらず、国会でも医療界でもタブーのままです。そこに斬りこんだのが伴明監督の本作です」と解説した。

 毎熊は当サイトの取材に対して「安楽死そのものは前から〝何かしらの手段の一つ〟としてあるのかなとは思っていましたが、今回の作品は『安楽死という制度』を描いている。その『制度』ということに関していえば、僕はこれまでそんなに考えてこなかったと思います。『制度』として、実際、スイスで安楽死するためにはこれだけの段階を踏まなければならないとか知らなかった。安楽死するための大変さ、逆に言うと、そこまでの覚悟を持って行うんだという、いわゆる自殺とはまた違う、本当に死にたいという強い意志を持って、その制度の中で進んで行くというのはこの作品に出演したことで知ったという感じです」と思いを明かした。

 関連資料などを読み、当事者を取材した。毎熊は「ただ、そうした時間は役作りに生かすというより、この役に挑むための『度胸』をもらうためでした。僕が演じたパーキンソン病の方と話したからといって、自分が何かを具体的に得るわけじゃない。それでも『どういうふうな気持ちでそう思ったのか』という話を聞いて、そういう思いの人がいるんだなと実感し、その上で、この役を責任持ってやるということ。映画の構成とかを考える感じで役を作って、フワッと演技するだけでは違うという気がしたので」と振り返った。

 冒頭、ラッパーとしての激しいライブシーンから一転、重篤な病によってベッドや車椅子で静かに苦しい時を過ごす患者となる。毎熊は生命力にあふれた前者と、徐々に弱っていく体で死と向き合う後者を演じ分けた。

 「パーキンソン病の特徴である手足の不自由さをどこまで表現するかということが一番迷いました。そうじゃない人間がそれをやるということは、どんなに役者がなりきったところでウソなわけじゃないですか。最初は、強調せずにやろうと思っていたんですけど、実際に(患者と)お話をして、そのしんどさ、つらさを表現しないと逃げたことになる、ちゃんと伝えないと、章太郎の『死にたい』という思いにはなっていかないと。100%、役になりきれないことは承知の上で、自分が思う『しんどさ』をやっていこうと思いました」

 年が明け、公開が近づいてきた。「タイトルを⾒て『観たくない』と思う⼈もいるかもしれない。テーマとしては重たいですし、安楽死は今の⽇本ではタブーとされていますからね。でも、この難しいテーマを、ただ、におわせるだけじゃなく、真っ向から描いているので、ぜひ観て欲しいです。これは、今観るべき問題作だと思います」。毎熊は言葉に力を込めた。

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