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女優の中江有里も出品「文学フリマ」とは?自主製作本の即売会が人気、書籍離れの時代も「紙」の魅力健在 

北村 泰介 北村 泰介
俳優・歌手で作家とマルチに活躍する中江有里
俳優・歌手で作家とマルチに活躍する中江有里

 「本離れ」が懸念される中、「文学フリマ」という自主製作本の展示即売会が20年以上にわたって愛好家たちの間で定着し、静かなブームになっている。23日には「文学フリマ東京41」と題して東京ビッグサイトで開催される。同イベントに初参加する俳優・歌手で作家の中江有里は、これまで新聞や雑誌に執筆しながら書籍化されなかった「書評」を一冊に編集して出品するという。中江にその思いを聞いた。

 「フリマ」とは「フリーマーケット」の略称。文学フリマは2002年11月に東京で初開催されて以来、全国各地に拡散している。小説や詩、短歌、俳句、エッセイ、ノンフィクションといった活字作品だけにとどまらず、絵本、漫画、写真集など広い解釈での〝文学〟が会場のブースに並び、執筆&製作者である出店者が販売する。

 中江は「自分が〝文学〟と思うものを即売する会です。東京は一番規模が大きくて、今回は3000ブースくらい出ます。それぞれ個人、出版社も含め、作家が参加する場合もあるんですけど、既刊本というよりは、そのために作った本を即売するということで、私も今回の文学フリマのために作った本を売る予定です」と説明した。

 さらに、中江は「電子書籍だとか、スマホなどを通して文字には触れられているんですけど、『文学フリマ』という、いま注目されている場所で、皆さん、『そこにしかない本』との出会いを求めて来られているんですよね。著者や製作者と直接、顔を合わせて、その本を買うという行為があるので、興味を持って来てくださるんじゃないかと思います」と背景を読み解いた。

 自主製作した会場限定発売の書評集は「ホンのときめき」と題された。

 「どういう本であるとか、読みどころであるとかを『書評』という形でたくさん書いてきたのですが、結局、それらが本になることはあまりない。新聞や雑誌に載っても、(その媒体が)読まれなくなるところで終わりなので、『せっかく書いたのに、そこで終わってしまうのは寂しいし、自分としてもそれらを何らかの形にして残したい』という気持ちがありました。今回、これまで書いたものを選び、自分で編んでみたいということで作ったんです。書評の対象は新刊で、それも3か月もすれば既刊となりますが、本自体は既刊であっても、初めて読む人にとっては、たとえ何十年前の本でも〝新刊〟なんです。ですから、書評って(媒体に掲載された)そこで命が終わるわけではない。残しておいて、その本にたどり着くための地図みたいなものになればと。著者が思っているのとは違うことを書いているかもしれないですけど、読者と本をつないでいく橋渡しにはなるかなと思います」(中江)

 さらに、「阪神タイガースに熱狂する気持ちを観戦しながら言語化した」という25日発売の新刊書籍「日々、タイガース。時々、本。猛虎精読の記録」(徳間書店)の先行販売、既刊で最新の文庫本「水の月」(潮文庫)も自身の会社「オフィスクレヨン」の出店ブースに並べる。

 こうした紙の書籍を手に取り、ページをめくりながら読むという、「視覚」と「触覚」で本と触れ合う喜びがある一方で、「聴覚」を通して文学と触れ合う試みを11月からYouTubeで始めた。「中江有里の夢のまにまに」と銘打った名作朗読チャンネルで、第1回の配信は新美南吉の「ごんぎつね」。隔週で更新予定という。

 「どういうYouTubeを始めればいいのかなと考え、何か継続できるものをやれたらと思った時に、名作の朗読が自分にぴったりだと思い、始めました。『青空文庫』というネット上の文庫サイトに入っている名作を朗読します。読んだことのないもの、読んだけど忘れてしまった…とか、そういったものに触れる機会になればと思います。眠れない夜に聞いていただくだけでもいいかなと。そして、そのまま寝てしまってもいい…ということで『夢のまにまに』というタイトルにしています。何回聞いても(寝落ちすると)最後まで聞き終わらないという(笑)。深夜、静かな自宅で収録し、編集するという手作りYouTubeです」(中江)

 文学フリマとYouTube。中江は「文学に触れる機会をいろんな形で提供できればいいなと思っています」と意欲を示した。

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