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出演作品は600本の波岡一喜「地獄なんです」減量に苦労も「仕事ですから」 新たに目指す俳優像は松田優作

中江 寿 中江 寿
波岡一喜(撮影・西田忠信)
波岡一喜(撮影・西田忠信)

 数多くの作品で印象的な役を務める俳優の波岡一喜(47)がこのほど、大阪市内でよろず~ニュースの取材に応じた。「姫が愛したダニ小僧」(2026年1月9日~18日、大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ)に出演するなど、舞台、ドラマ、映画と幅広く活躍。俳優としてのこだわり、心構えなどについて語った。

 これまで出演した作品は約600本。「ワンシーンとかで出ることもあるので、1年間に30本くらい出るんですよ。20年やってきたから600本くらいかな…。もう相当な数ですね」。オファーが殺到するなか、基本的には声を掛けてくれた順番に出演を決める。「大杉漣さんスタイルというか、早くからお声掛けしていただいて、一緒にやろうと言ってくださる人とは、一緒にやりたいなって姿勢ではいます」。ドラマで長年共演し、2018年に急逝した先輩の影響が大きいという。

 役作りはしない。「衣装とメイクをしたら、もう8割は決まると思うので。あとは台本を覚えて、自分のやりたいようにイメージしてやるという。役作りなんて、大それたものはないですね」。ただ、役のイメージに合わせて体重を増やしたり、減らしたりすることはある。ベスト体重は65キロ。最近、80キロに増やすにあたり、鈴木亮平に相談したところ、「落とすことの方が大変ですよ。20代じゃないから、すぐにちょっと筋肉がついて、ちょっと落とせるみたいな感じではないです、覚悟を持ってください」と忠告された。

 以前、がん患者の役で65キロから55キロに落としたときは、さすがにキツかったそうだ。「80キロから65キロと65キロから55キロは全然違うので。ただでさえ、脂肪が少ない状態から55キロにするって、もうマジ、地獄なんですよ」。増量してからベストに戻すのと、ベストから減らす違い。最低限の水分は取るが、ほぼ断食状態で過ごしても体重は落ちない。筋肉がないと脂肪が燃えないから、トレーニングは続ける。「ずっと寒かったですよ」。体脂肪が減るにつれ、寒さを感じるようになった。撮影が終わり、数カ月ぶりにラーメンを食べると腹を壊してしまったそう。「いっぱい食べられなくなって、胃も小さくなっていて」と振り返った。

 そうとう過酷なはすだが、至って冷静だ。「大変とか言っている話ではなく、仕事ですから、やりますよね」。引き受けた役を全うするため。「サラリーマンの人が営業カバンを持って、名刺配って会社でデータを打ち込んでいる。飲食店の人はずっと立っていて、足が痛いしね。中華鍋をずっと振っている人は腱鞘炎になるし、仕事となると、それぞれあるので。それと一緒ですよね。しんどい時ももちろんありますけど、どの仕事もそうじゃないですか」。プロとして仕事と割り切り、当然のことだと受け止めている。

 俳優仲間では福士誠治、上地雄輔と特に仲が良く、連絡を取り合ったり、食事に出かけたりすることもある。「お芝居の話はほとんどしないですけど、最近どう?とか、あの人どうやった?とか、そういう話はしますね」。気心の知れた相手とのたわいもない会話が楽しい。「よく俳優さんやタレントさんが友達がいないって言うんですけど、やっぱり理由があって。僕らは転校生なんですよ。作品ごとに転校するんです。そのときはゴハンに行ったり、仲が良いんですけど、結構、転校したら前の学校の子と遊ばないじゃないですか。だから、みんな友達がいないんですよ」。福士や上地は俳優として不遇だった時期からの付き合いで、幼なじみのように続いている。

 これからの俳優人生については野球に例えて「バットを振って行こう」と考えている。「新しいマネジャーが入って、悪気なくポロッと〝天下取りましょうよ。まだ行けますよ〟って簡単に言ってくるわけです。でも、確かにその気持ちって、もう忘れたなと思って。もう1回、欲を出して、何かをやっていくということをやっていくのもいいかなと」。素人の何げない言葉が、エースで四番のような俳優を目指した頃の気持ちを思い出させてくれた。

 自分は二番でバンドヒットを狙うタイプだと、いつの間にか思うようになっていたが、意識が変わった。「基本的には待つ仕事なんですけど、心構えというか、〝いや、僕は二番でいいです〟って言ってバントをずっとやっているヤツと、言いながらもホームランを打つ練習をしているヤツとは全然違って。甘い球が来たら打つよ、バントばっかりしないよ、っていう気持ちにはなっています」。準備を整えている。

 憧れの故松田優作さんのように。「もろ、エースで四番じゃないですか」。新たな挑戦に向かって、静かに気持ちを高ぶらせている。

 ◆波岡一喜(なみおか・かずき)1978年8月2日生まれ、47歳。大阪府出身。早稲田大学卒業。2004年に「プライド」でドラマデビュー。2005年公開の映画「パッチギ!」の準主演モトキ・バンホー役で注目される。NHK 連続テレビ小説「ごちそうさん」(2014年)、NHK大河ドラマ「どうする家康」(2023年)に出演するなど、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍中。

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