大半の人が素通りしてしまう、いたって普通の街路樹。しかし、専門家によれば「あまり見ない」のだという。その理由に「素敵な視点」「知識があると世界がこう見えるのすごい」と感心の声があがっている。
「街路樹のこういう植え桝、しばしば草のマンションになってて最高」。自身のXにそう投稿したのは、樹木医・インタープリターとして身近な自然の魅力を発信している「瀬尾一樹」(@kusanonamaesay)さん。先日、都内で発見した街路樹の植え桝が「草のマンション」なのだとか。一体、どういうことだろう。
近づいて見ると、保護蓋にあいている穴のひとつひとつから草が生えている。ほとんどの人は全部まとめて「雑草」としてしまいそうな、この草たち。しかし、瀬尾さんが同定すると、こっちの穴から生えているのは「スズメノカタビラ」、その横は「カニクサ」、そのまた横は「オランダミミナグサ」…など、それぞれ種が違う。ひとつひとつの穴の“住人”が違う、まさに「草のマンション」だ。
このような植え桝に出会うたび「よく観察して興奮しています」と語る瀬尾さん。「街路樹の植え桝にたくさんの草が生えていることはよくありますが、こうやって穴があいて『草のマンション』になるようなタイプの植え桝はあまり見ないので、見つけたときは嬉しかったです」と当時の興奮を振り返った。
ネットでも「こんなに上手いこと、すみ分け居住してるとは!」「素敵な視点」「草のマンションって表現すごくいいな」「知識があると世界がこう見えるのすごいな」「教養があると楽しいが増えますね」「知識人には、凡人とは全く違う世界が見えている、という典型的なやつ」と感心の声が多数あがった。
瀬尾さんは著書「科で見分けて楽しむ 雑草観察図鑑」(山と溪谷社)、「樹木医がおしえる 木のすごい仕組み」(ベレ出版)などで、身近な場所で見られる植物を紹介している。2023年のNHK連続テレビ小説「らんまん」でも取り上げられた植物の世界。その扉は身近なところに転がっている。