シンガー・ソングライターの白井貴子(66)がこのほど、大阪市内でよろず~ニュースの取材に応じた。1981年にデビューし、1984年に「Chance!」がヒット。80年代に「ロックの女王」と呼ばれ、現在も活動を続ける彼女が、これまでの音楽人生や今後について語った。
大阪で11月16日に白井貴子&THE CRAZY BOYS「NEXT GATE 2025 OSAKA 〜’85大阪城西の丸庭園 再現ライブ!〜」(松下IMPホール)を開催。「今は年間何十本とライブをやっている訳ではないので、ホントに年に2回か3回で貴重な一日ですから、昔のファンの皆さんはもちろん、最近知ってくれた方や、いろんな思いの方がいらっしゃると思うので、ピンポイントで集中して遊びに来てほしいなあと思います」と意気込みをのぞかせた。
来年でデビュー45周年。創作意欲は衰えていない。「朝、曲ができることがとっても多いんですよね。それが例えば木に成っている果物のリンゴやブドウとかで、いいものだとしたら、取らないともったいないって気持ちになるんです」。明け方に飛び起きて、浮かんだメロディーやフレーズでピアノを弾いたり、口ずさんだりすることもある。「こんな曲がいいなあってイメージを湧かせて、数日放っておくと、ふわっと出てくるというか」と明かした。
以前はノートに書き留めていたが、最近はスマートフォンにタイトルを入れて吹き込む。「あとで掘り起こしていかなきゃいけないんですけど、すごく楽をさせてもらうというか、とりあえずは入れておこうかとか」。ストックは100近く。「これをなくしたら、泣いちゃうかも」と大事に保存している。
1984年に「Chance!」がヒット。その頃に「ロックの女王」と呼ばれたことについては「いい音楽を作って大ヒットしたいという欲望はすごくありましたし、今でも変わらないですけど、こんな風に認められて、こんな風に見てもらいたいという願望はあまりないんですよね。だから、ロックの女王と言われたときも、ほとんど何も思わなかったです」と冷静に受け止めていた。
ただ、当時はさらにヒット曲を期待する周囲の重圧、多忙な日々の中で心身ともに疲弊していた。「体力、気力…。ちょっとボロボロになっていましたね」。苦悩が続いた。「私という人間は一人しかいないし、一日は24時間しかないし…。30歳手前になった時、もっと自分をちゃんと磨いてあげないと汚くなる一方だという、追い詰められた気持ちがありました」。何とかしなければ!という思いがふつふつとわき上がってきた。
1988年に音楽活動を休止して渡英。きっかけは、以前に撮影で訪れたロンドンで出会った〝花〟だった。「大地に咲く野生のマーガレットだったんですけど、楽しく生きていた頃の自分が咲いているような気がして。根底に持っている自分の力を生かして生きれば、自分も幸せだし、いいなあと思ってくれる人も出てくるに違いないと思って。自分から変わっていかなければいけないんだなってことに気がついたんですね」。ライブツアー、ラジオ番組をしながら、1年半かけて準備を整え、現地で2年間過ごすことにした。
ロンドンでの生活が環境問題について考える大きな転機だった。「江の島の近くで生まれて、夏休みに海に飛び込むと、当時はサンオイルブームで海面がギトギトで…。それが始まりだったと思うんですけど、一番ちゃんと環境配慮の生活を取り入れ始めたのはロンドンからでしね」。環境意識が高く、自然豊かな文化とくらしの中で得ることは多かった。
1990年に帰国して音楽活動を再開、同時に環境保護の活動なども始めた。当時の日本はバブル景気に沸いていた。「まだ着られそうな服とか使えるような物がゴミの日に山のように捨ててあって、何じゃこりゃ!と思って。だったら、自分ひとりでもやっていく、それで始めて」。現在も神奈川県環境大使・GREEN EXPO2027 応援団長などを務めている。
シンガー・ソングライターとして〝生涯現役〟を思い描く。「バンドは2時間何分、走って歌ってマラソンをしているようなものなので、『今日が最後です』っていう日があってもいいかなと思っています」と言いつつ、「白井貴子という音楽家はそういう終わり方と言ったら、そうじゃなくて。それこそベッドの中でも曲は作れると、寝たきりになっても曲は作れると冗談半分に言っているでんすけど…。(音楽活動は)永遠ですね」。自分の進む道をいつまでも追い求めていく。
◆白井貴子(しらい・たかこ)1959年1月19日生まれ、神奈川県出身。1981年にデビュー。 1984 年「Chance!」のヒットを機に「渋谷ライブイン 10days」「新宿厚生年金5DAYs」「西武球場ライブ」を成功させ「ロックの女王」と呼ばれた。 2016 年北山修氏から「次世代に北山作品を歌い継ぐ歌手」に抜擢され、北山氏との共作の新作3曲を含むアルバム「涙河」リリース。2022 年「NEXT GATE 2022」初配信。2023 年、長年難病の母を介護し看取り~葬儀までを家で執り行った体験を綴った初執筆本「ありがとう Mama」を出版。楽曲「Mama」と MV 配信。2023年白井貴子& THE CRAZY BOYS のアルバム『FLOWER POWER』のレコード復刻リリース。神奈川県環境大使・GREEN EXPO2027 応援団長。