音楽や演劇の公演などで区切りの年数に合わせた「●周年」という表現が使われるが、9月に都内で開催されるコンサートの一覧を見ていたところ、「30執念」というタイトルを掲げた公演が目についた。「周年」の〝誤植〟かと思い、主催者側に確認すると、実は正式名称なのだという。その意図するところについて、公演の主役であるアーティストに話を聞いた。
1995年から本格的な活動を始めたシャンソン歌手・ソワレの公演。タイトルは「30執念記念リサイタル CHAN -GOU-LILAS~シャングリラ」と銘打たれ、13日に東京・上野の東京文化会館 小ホールで開催される。ゲストに3人組音楽ユニット「星屑スキャット」のギャランティーク和恵、歌手のRickyを迎え、バックの演奏は三枝伸太郎(ピアノ)、ジミー高宮(コントラバス)、高良久美子(ビブラフォン&パーカッション)が務める。
まず「30執念」について、その意図するところを問うと、ソワレは「時代錯誤はなはだしいシャンソンという音楽に若い頃から惹(ひ)かれていて、今だに、それをメインで歌手をやっているのは正しく『執念』としかいいようがなく、タイトルを考えていた時にピッタリだと思いました」と明かした。その上で、同氏は「〝周年〟のような、その日を記念するリサイタルにはさらさらする気がなく、これからも〝執念〟を持って歩み続けるぞ…というダブルの意味があります」と付け加えた。
昨年、生誕100年を迎えた宝塚歌劇団出身で不世出のシャンソン歌手・越路吹雪(1980年死去、享年56)の研究家としても知られ、越路のCD監修やイベント・プロデュースなどでも活動しているソワレ。今回の公演では自身のオリジナル曲に加え、越路のカバー曲も披露するという。
ソワレは「これまでの歩みと、これからの挑戦を皆さまにお届けいたします。が、しかし、ここで満足はいたしません、31年目からのソワレ、大きく羽ばたこうと思っております。一夜限りの宴です」と意欲的だった。