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大河ドラマ「べらぼう」老中・田沼意次の言動から現代人が学べることは何か?

濱田 浩一郎 濱田 浩一郎
江戸城(mname/stock.adobe.com)
江戸城(mname/stock.adobe.com)

 大河ドラマ「べらぼう」第32回は「新之助の義」。「べらぼう」では渡辺謙さん演じる老中・田沼意次が光を放っています。意次と言えば一般的にはこれまで「賄賂政治家」のように見られてきましたが、それとはまた異なる意次像が同ドラマでは打ち出されているのです。意次は当初、9代将軍・徳川家重(8代・吉宗の子)に仕えますが、その家重は意次のことを「またうとのもの」(正直者、律儀者)と評し、子の家治(10代将軍)にも意次を重用するように遺言しています(徳川幕府の公式史書『徳川実紀』)。

 家治は父の言いつけを守り、意次を重用したので、意次の出世に繋がったとされます。意次出世の理由の1つは家重に律儀に仕えたこと、正直者だったことが挙げられるでしょう。さて意次は子孫への遺訓の中で「人とは違う振る舞いをしたら、世間から変人と見られてしまう。このようなことは慎むべきだ」と述べています。他人と違う振る舞いをするのではなく、世間並みこそ大事であると意次は説いているのです。意次が仕えた10代将軍・家治は「異風」(普通とは違った風俗)を嫌ったとされていますが、その事を意次が過度に意識したというよりは、おそらく家重に小姓として仕えていた時からの長い宮仕えの末に自然と体得したものだったのでしょう。世間並みに振る舞うべきとの意次の思考も彼の出世を支えたのかもしれません。

 また意次は諸大名とは親しく付き合い、出世したことを鼻にかけることもなく、下級の家臣にも親切に振る舞ったとされます。出世したり人気が出ると周囲に対し傲慢に振る舞うようになる政治家やタレントもいるとよく聞きますが、意次はそうした事はなかったようです。意次の以上のような言葉や態度は現代に生きる我々にも大きな教訓を与えてくれます。

(主要参考・引用文献一覧)
・藤田覚『田沼意次』(ミネルヴァ書房、2007年)。

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