ザクザクとした食感とリーズナブルな価格設定で老若男女に愛されるお菓子「ブラックサンダー」。発売元の有楽製菓株式会社(東京都小平市)は、これまで一般非公開だった製造工程を、愛知県豊橋市に新設した見学施設「ワクザクファクトリー」で27日から公開する。発売当初の不振を乗り越え、同社の看板商品へ成長した〝国民的チョコ〟の新たな門出。河合辰信社長(42)に万感の思いを聞いた。
「ブラックサンダー」は1994年に誕生した。ココアクッキーとプレーンビスケットをチョコレートで固め、ザクザクとした食感が特徴的。しかし、販売不振でわずか1年で一時生産終了となってしまった。
それでも、九州地区の一部店舗で人気があり、復活を望む声があったことから、九州担当の営業担当が会社に直談判!『そこまで言うなら、残っている包装紙の分だけ…』と、エリア限定で再販売が決定。そこから口コミで評判が広がり、なんとか生産が続けられることになったという。
その後、商品名をカタカナ表記に変え、「若い女性に大ヒット中!」というコピーをつけるなど工夫を重ねると、大学生協で人気が出始め、コンビニ展開も始まった。2008年、北京五輪直前に体操男子代表の内村航平が「好きなお菓子」と話し、二つの銀メダルを獲得した経緯から爆発的ヒット商品へ。これまでに累計19億本を販売、関連・派生商品も300種類を超える同社の看板商品となった。
奇跡のようなサクセスストーリーにも、河合社長は「本当にいろいろな方々に助けられ、支えられてきましたが、やはり心の底からブラックサンダーを信じる社員がいたからです」と〝人の力〟を強調する。「諦めずにいろんな場面でそれぞれが力を発揮してきた」からこそ、開けた道だ。
商品作りの根底にあるものは何か。「経営哲学、なんて大げさなものではないですが、常に相手の心を考えることは大切にしています」と話す。有楽製菓が目指すのは〝日本一ワクワクする菓子屋〟。「ただおいしいもの、だけではなく、お客さまの気持ちを考えて〝感じるもの〟を届けないと。ものづくりとは、そういうことだと思います」。新施設は製造工程見学のほか、プロジェクションマッピングで参加者が具材になったような体験、スタンプラリーやフォトスポット、詰め放題などの仕掛けも盛りだくさん。「ただおいしい」を超えたブラックサンダーの新しい楽しみ方を提供する。
顧客の心を考え、経営を考え、「もちろん社員のことも」考える。常に思考をめぐらせる日々の中、ほっと一息つくときに、河合社長おすすめのブラックサンダーの食べ方は-。
「そのまんまなんですが、1個を丸々口に入れて、モグモグしているところにホットコーヒーを流し込む、ですね。いろいろなアレンジレシピも公開されていますが、やっぱり私はこれが一番好きです」。
豪快にして王道。愚直なものづくりへの思いとともに河合社長の食べ方をまねすれば、「ブラックサンダー」をいつもより味わい深く感じる…かもしれない。