消費経済アナリストの渡辺広明氏がこのほど、都内で開催された「2025年度の消費と金融のトレンド予測」と題したパネルディスカッションに経済アナリストの馬渕磨理子氏と共に参加した。渡辺氏はさまざまな題材について解説した中で「節約生活」についても提言した。
共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を運営する株式会社「ロイヤリティ マーケティング」(本社・東京)の主催。同社が実施した20-70代の男女を対象にした意識調査の結果を元に、生活者の経済環境、消費や金融の動向について話し合われた。
渡辺氏は株式会社「ローソン」に22年間勤務。店長・スーパーバイザーを経てバイヤーを経験後、メーカーで商品開発・マーケティングに従事し、自ら株式会社「やらまいかマーケティング」を設立した。メーカーとは約780品目の商品開発に携わり、バラエティから報道番組までメディア出演、講演と幅広く活動している。
まず、渡辺氏は「個人消費」について「(同社の調査によると)『自由に使えるお金が減った』という人が20%いたんですよ。『増えた』という人は7%しかいないという厳しい状況。そこで『節約しなきゃ』ということになる」と指摘した。その裏には「潜在的な不安」があるという。
「今年で戦後80年、さらに30年間の『平成デフレ・マインド』が根深く、僕らの内にある。高齢化する世の中で、年金も少なく、社会保障の負担も重くなり、インバウンドは増えても、内需といわれる国内だけでお金回すことは日本の人口が減っていくわけだから必ず減る。2024年は物価高で実質賃金がマイナス。今もトランプ関税の影響で状況は不安定で、中国と米国の関係も不透明。物価高もあって、消費に積極的になれない現状。そうした中で節約志向が強まっています」
国際状況も含めた俯瞰(ふかん)した視点で状況を総括した渡辺氏。日常生活での〝ささやかな節約〟について具体例を挙げた。
「食費、水道・光熱費…と、なくてはならないものの値段も上がっている。節約意識が高まる中、僕はペットボトル飲料をやめて、水筒にしました。また、トイレでは〝大〟であっても〝小〟で流すようにしています。よほど大きなものでなければ、大でも小でだいたい流れます。みんなでやると、(水道代節約など)かなり改善されてくると思います」
また、渡辺氏は「食費、水道・光熱費、外食の価格が上がっているので、支出が増えたと感じる人が多い。アンケートによると、衣類、バッグ、旅行、美容・化粧品とかが減ったという人が増えている。それはお金がないから。エンゲル係数という食べ物にかかる比率が日本は28・3%と、1980年、81年以来の最高数字になっています。食べ物は生きる上でなくてはならないものですから、食費は上がっていく。逆に、衣料や靴などは、あった方が豊かだけど、なくても暮らしていけるということで支出を減らしている」と付け加えた。
減らせない食費。せめてもの〝ささやかなぜいたく〟として「コンビニエンス・ストアの菓子・アイスクリーム類」が挙げられるという。
「食費の負担が増える中、外食は減っているが、注目は『菓子・アイス』で、売り上げが若干とはいえ増えている。やはり、『楽しく食べたい』じゃないですか。お金がないから外食を減らすしかない人でも、コンビニでお菓子とかアイスを買って楽しむ。我が家も外食の回数は減らしているんですけど、アイスは増えている気がします。ちなみに、1回の外食にかかる金額は値段が上がっているから増えているが、外食に行く頻度は圧倒的に減っている。そこが日本の消費の全てを表しているかもしれないです」
節約生活をしつつ、できる範囲で「好きなものにお金を使ってほしい」と、渡辺氏は呼び掛けた。そして、改めて「みなさん、大を小で流しましょう」と強調した。
まさに「小よく大を制す」。もちろん、この言葉が持つ本来の意味とは異なるが、あえて、トイレに例えられた、その字面からこのような表現をしてみた。そこには〝常識〟にとらわれず、〝当たり前〟とされることから目線をずらした「発想の転換」があり、厳しい状況を生き抜く知恵がある。