1985年1月、テレビドラマ「毎度おさわがせします」で女優デビュー、同年6月には「C」で歌手デビュー、12月には「ビー・バップ・ハイスクール」で銀幕デビューを果たし、絶大なる人気を築いてきた中山美穂さん。2024年12月に54歳の若さでこの世を去ってしまった彼女の「お別れの会」が東京国際フォーラムで4月22日に行われた。
生前、映画舞台挨拶でお世話になった私も最後の挨拶にと足を運んだのだが、会場にはステージ衣装や愛用のギターが展示され、思い出の映像がスクリーンに投影されていた。どれだけの人に愛され、必要とされたのか。今年で芸能生活40周年になるはずだった中山美穂さんは、芸能界で計り知れないほどの功績を残していた。
そんな彼女の主演作が、今またスクリーンで見られる。まずは公開30周年記念で4月4日から上映となっている4Kリマスター版「Love Letter」(1994年)がある。
同作は、その作家性から今や多くのファンを持つ岩井俊二監督が、オリジナル脚本を手がけ、長編デビュー作でありながら大ヒットを記録したラブストーリーだ。この映画では、亡くなった婚約者が暮らしていた小樽に手紙を出し続ける主人公・博子と、彼女と奇妙な縁で出会う樹という二役を中山美穂さんは演じ、ブルーリボン賞や報知映画賞、ヨコハマ映画祭で主演女優賞を獲得。雪山に向かって彼女が叫ぶ「お元気ですか?私は元気です」は、日本の映画史に残る名台詞としても知られ、恋愛映画の金字塔とまで言われている。
そんな「Love Letter」は海を渡り、韓国でも大ヒットを記録。結果、この作品に魅せられた韓国の監督による中山美穂さん主演作が2作も生まれた。それは「私の頭の中の消しゴム」のイ・ジェハン監督が、辻仁成氏の原作を映画化した「サヨナライツカ」(2010年)と、今年5月よりリバイバル上映となるチョン・ジェウン監督の「蝶の眠り」(2018年)だ。こちらは韓国ドラマ「コーヒープリンス1号店」のキム・ジェウクを相手役に迎え、アルツハイマーに侵された女性作家と韓国人留学生の年の差恋愛を綴ったラブストーリーだ。
どちらも公開当時、舞台挨拶で司会を担当したのだが、あの時のことは鮮明に覚えている。両監督とも中山美穂さんのファンであり、彼女の美しさと繊細なまでの演技を絶賛していた。そんな時は、恥じらうように微笑み、緊張からの震える声で謙虚に感謝を述べていた中山美穂さん。ある時の舞台挨拶では劇場入りをした私を待ち構え、「これはフランスのクッキーなの。さとりさんにも」と微笑みながら手渡ししてくれ、子育ての大変さに共感してくれたのだった。まるで内緒話をするような可愛らしい声で話す彼女は、スクリーンではずっと見つめていたくなるほど切なくも愛おしい表情をする。だから劇場で彼女の演技を見た観客は、その姿に惹き込まれ、ファンになってしまうのだ。
スターであり女優の中山美穂は、これから先も映画という世界で生き続ける。そして時を経てもリバイバル上映の度に、観客に愛と感動をプレゼントしてくれるに違いない。