M-1配信動画でネタカット芸人が集結!謎解明ライブが盛況「カットされたネタに注目、今回が初めてかも」

山本 鋼平 山本 鋼平
コウキシン(左から)シン、コウキ
コウキシン(左から)シン、コウキ

 日本一の漫才師を決める「M-1グランプリ2024」で3回戦、準々決勝に進出し、公式の配信動画でネタがカットされた芸人が出演したお笑いライブ「全カットネタ寄席」が9日、東京・渋谷ユーロライブで開催された。中国と日本の異色コンビ、コウキシンは3回戦のネタがカットされたことを機に、コンビ初の主催ライブとして今企画を実現。事務所の垣根を越えて〝ネタの供養〟とばかりに人気芸人が集結した。

 会場が笑いに包まれた。事前の想像よりも直接的過ぎる表現はなかったものの、宗教、国籍、差別などの点で、極めて一部から攻撃的な批判を受ける可能性がありそうなネタがズラリ。版権が問題となる歌ネタでも、お笑い要素を加えたアレンジがあった。ブラックボックスだったネタの全容が解明され、スッキリした表情で大笑いする客席の様子が印象に残った。

 コウキシンは金融系の会社に勤めるコウキ、中国出身で大手広告代理店アジア事業責任者の顔を持つシンによるコンビ。M-1に出場するため2019年に結成。21年にナイスアマチュア賞に輝いたことで注目を集め、大手事務所のワタナベエンターテインメントに所属するに至った。

 ライブを終え、コウキは「盛り上がって良かった。コンプラ違反でYouTubeに上がらないネタでも、これほど受け入れてもらえる。需要があるのが分かりました。こういったお笑いが存在してもいいのではないか」と笑顔を見せた。シンは「中国のお笑いファンから、カットされたネタを見たい、と言われていました。僕は中国と日本のお笑いの架け橋になりたいと思っていたので、このタイミングでライブをやれてうれしい」と、演出面を担ったライブを振り返った。中国からの訪日客が数人おり「楽しかった」と声をかけられたという。コウキシンにとっても、この日初めて内容を知った他コンビのネタもあった。

 コウキは「YouTubeでカットされたネタをライブで届けられた。面白いのに埋もれていたネタを、〝ネタの供養〟ではないですけど、ライブでお客さんに届けられて良かった」とうなずいた。

 コウキシンは今年のM-1で初めて3回戦に進出。公式動画として、ネタ時間3分の3回戦では、3組まとめて約9分の動画が配信され、準々決勝では同様に4分の動画がコンビ別に配信される。コウキは配信された3回戦の動画をチェックしようとした瞬間、嫌な予感に包まれたという。「9分だと思ったらかなり短くなっていて、その時点でヤバッと思いました」と振り返り、「3回戦の動画がバズることが、この何年か、無名芸人にとって主流の売れ方なんです。そこで何万回も再生されれば、業界の目に留まる、芸人からも認知される。僕らのような無名芸人にとって、3回戦の動画はとても大事なので、率直にとてもガッカリしました」と続けた。

 先に3回戦が実施された京都・大阪会場の動画が配信されると、コウキが「芸人、ファンの間で、今年から急に厳しくなった、と話題になっていました」と話すように、ネタのカットが続出した。登場からネタが始まる10秒ほどで「一部映像をカットしております」とテロップが現れ、動画が再開して5秒ほどで「もうええわ」と終了するようなネタも珍しくなかった。

 M-1は公式サイトに「漫才ネタについては、下記の各事項に該当しないこと」として、「著作権、著作隣接権、肖像権、名誉、プライバシー等、第三者の権利を侵害、または侵害を助長するもの」「公序良俗に反する、または誹謗、中傷、差別、暴力、わいせつ、性描写等、一般に不快感を与える内容が含まれるもの」「その他、上記事項に該当するおそれがあるもの、または上記各事項に準ずるもの」を挙げている。YouTube、TVerへの配信動画でカットされているものは、上記の規約に反していると推察される。芸人に動画カットの通達、理由の説明等は行われていないようだ。

 今年の流れを把握していただけに、コウキシンは事前にネタの調整を行ったが実らなかった。それでも、最近は使用を控えていたネタを締めるフレーズ「全部ウソだよ」を復活させた。シンは「僕らの作戦です。今年はコンプラが厳しいから、もしかしたらカットされるかもしれない。最後に『全部ウソだよ』と入れて、内容を気にさせるようにして、僕らを検索してもらえるようにしました」と狙いを明かした。最善策は打った。

 他事務所、先輩にも臆せずオファーをかけ、思いも寄らぬ豪華メンバーが集まった今ライブ。シンが「逆に今年はカットされたことで注目されたかも」と話せば、コウキは「こういうライブができたように、カットされたネタに注目が集まったのは、今回が初めてかもしれない」と呼応した。コウキは「M-1がより競技化され、コンプラも厳しくなっていく。でもライブでは過激なネタがウケている。M-1向けの漫才、それ以外の漫才と、二極化されていくのかもしれない。僕らは両方ができるようになる必要があるのかも」と総括した。

 芸人としてさまざまな学びがあった今年のM-1、今回のライブ。シンは「もっと中国と日本のお笑いの架け橋となる活動を続けたい。日本のお笑いがもっと好きになったので、グローバルなことにも挑戦したい」と未来を見据えた。

 コウキは「来年は準々決勝に絶対に行きたい。世間の風潮にアジャストしつつ、一方でこういうお笑いの良さを生かしたライブもできれば」と目を輝かせた。お笑い界に絶大な影響力を持つM-1に対して「僕らはナイスアマチュア賞に選んでもらったことで事務所に入れた。チャレンジし続ける価値のある大会です」と敬意を示していた。

【出演芸人=()内は今回のM-1進出結果】はじまりの歌(TKO木下&こたけ正義感=3回戦)、タイムボム(3回戦)、ガクヅケ(準々決勝)、オダウエダ(準々決勝)、ポテトカレッジ(3回戦)、戦慄のピーカブー(準々決勝)、不死身のレモン水(3回戦)、コウキシン(3回戦)。※ラパルフェ(準々決勝)は〝カットされそうゲスト〟として出演。

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