ウルトラマン愛の奥は深い。世界最大級の造形・フィギュアの祭典「ワンダーフェスティバル(ワンフェス)2024夏」が7月28日、千葉・幕張メッセで開催された。ウルトラマンはゴジラ、ウマ娘などとともに多くの作品が頒布される人気ジャンルだが、異色のラインナップが気になった。漫画「ザ・ウルトラマン」(作・内山まもる氏)からメロス、ファイタス、ジャッカル大魔王を制作した大帝國ビルトさんに話を聞いた。
昭和からはウルトラマン、エース、レオなど、平成からはティガ、ガイア、令和からはブレーザーなど多くのフィギュアが登場したワンフェス。その中で、1975年に小学館学習誌に掲載され、78年にはコロコロコミックに再登場した内山まもる氏の漫画「ザ・ウルトラマン」からのフィギュアが、独特の存在感を示していた。
大帝國ビルトさんは「小学校3年生頃だと思いますが、『別冊コロコロコミック』でジャッカル大魔王編を一気に読める特集号がありました。ウルトラ兄弟が次々に負けるのがショックなのと、鎧を身に付けて戦うメロスに心を奪われました」と語った。
原作ではジャッカルの前にエース、タロウ、新マンらが次々に殺害され、壊滅状態に陥った宇宙警備隊で生き残ったゾフィーら28人のウルトラ戦士が、地球侵略に向かったジャカル軍団の打倒を目指す。ゾフィーらが劣勢の中、ジャカルと対等な戦闘力を持つ宇宙警備隊アンドロメダ星雲支部隊長のメロスが登場し、やがてゾフィーと共闘し大団円へと向かう。別エピソードではメロスの弟であるファイタスが、セブンとの決闘に挑んでいる。1979年に放送されたシリーズ初のテレビアニメ「ザ☆ウルトラマン」とは無関係だが、多くのコミカライズ作品の中でも評価は高い。
千葉在住で会社員として働きながら、30年以上ワンフェスに参加している大帝國ビルトさん。7年ほど前にウルトラアクトサイズのレジンキット3体に、食玩サイズのメロス、ジャッカルを制作した。市販の関節部品を用いながら、一部では磁石を用いた装着・着脱を施すなど工夫が詰まっている。
大帝國ビルトさんは「『ザ・ウルトラマン』は版権の調整に時間がかかり、製品化されるまでかなりの年数がかかりました。僕が制作した頃にはもう版権問題はクリアされていましたが、自分がイメージするメロスが欲しかったんです」と振り返った。
原作漫画に出会った頃、都内の小学校に通っていた。1学年違いには、「帰ってきたウルトラマン」のスーツアクターを務めたきくち英一さんの子息が在学していたという。「早朝にウルトラマンの各作品の再放送があったのですが、作品の順番などがバラバラでした。初めて出会った新作が『ザ・ウルトラマン』でした」と述懐した。1979年にアニメ「ザ☆ウルトラマン」が放送され、翌80年には「ウルトラマン80」が放送されたが「ウルトラマンのブームはそれほど長く続きませんでした。代わってガンダム、ガンプラがブームになりましたね」と当時を思い返した。
小学生の頃の感動、複雑な経緯をたどった作品のその後、そして成人して手にした立体化の技術が結実した。今年に入り、メロスのアクションフィギュアが市販されるようになり、「ワンフェスでの頒布は今回が最後になるかも」と少し寂しそうに語った。それでも「テレビシリーズとは別の作品では、コミック作品の中でも僕の中でベストワンです」と話す表情は、子どもの頃に戻ったかのようだった。