新入社員にミスを注意→「褒められないと実力発揮できない」と弁解…上司・先輩が言うべきこと 識者が解説

石原 壮一郎 石原 壮一郎
写真はイメージです(Paylessimages/stock.adobe.com)
写真はイメージです(Paylessimages/stock.adobe.com)

 批判されることに慣れていない若者が増えているという。自分が正しいと思っても、他者から指摘されるということは、どこか自分に落ち度があるのでは…と俯瞰(ふかん)して自己を省みる発想力に欠けているとも言われる。そんな傾向も一部にあるといわれる新入社員に仕事のミスを注意したところ、「褒められないと実力発揮できない」と弁解された時、どう接するべきか。「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏がその対応策を提言した。

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 【今回のピンチ】

 あきれるほど仕事ができない新入社員。何度も教えた書類の書き方のミスを注意したら、「ボクってホメられないと実力を発揮できないんですよねー」と弁解してきた……。

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  春に入社した新入社員も、そろそろ仕事に慣れてきた頃でしょうか。そして周囲にとっては、それぞれの新人の「正体」が見え始めてきた頃です。

 ミスは仕方ありません。しかし、上司や先輩の注意をどう受け止め、どう反応するかは大きなポイント。素直に反省して、指摘してもらったことに感謝し、同じミスを繰り返さないために手を打てるタイプだったら、先々が楽しみだし、指導のし甲斐もあります。

 ところがこの新人は、先輩の自分がミスを注意したら「ボクってホメられないと……」と言ってきました。想定し得る中で「最低最悪」の反応です。何かのきっかけで心を入れ替えない限り、残念ながら一人前の社会人に育つ可能性はないでしょう。

 さて、先輩としてどう返せばいいのか。こちらの度量や力量が問われているという意味では、ピンチな状況と言えます。

 「あ、そう。勝手にしろ」と突き放すのは、先輩としてちょっと無責任。確かに、厳しい指導はパワハラ呼ばわりされがちな昨今ですが、だから何も言えない、何も言わないと開き直っていいことにはなりません。

 もちろん、パワハラは論外。しかし、新人の指導という先輩としての役割を放棄したら、何でもパワハラ呼ばわりする若手と「目くそ鼻くそ」になってしまいます。言うべきことはビシッと言ってやりましょう。

 そう返されたら「悪いけど、どこをホメればいいか教えてくれよ」と聞きたくなります。ただ、相手の鼻をへし折ることはできても、指導にはなりません。ムッとして、完全に心を閉ざしてしまう可能性もあります。

 たとえばこんな調子で、まずはお望みどおりホメてみるのはどうでしょうか。

 「なるほどねえ。たしかにこの状況でホメてくれと言える度胸はたいしたもんだ。俺には真似できないよ。キミはすごいねえ」

 思いっ切り皮肉を込めていますが、それを察知してしょんぼりするようなら、まだ望みはあります。

 やさしい口調で「ホメられたいのは、誰だって同じだよ。その前に、まずは注意されないことを目指そうじゃないか。きちんと仕事していれば、必ず誰かが見ていてホメてくれるさ」と諭してあげましょう。それをどう受け取ってどう変わるかは、本人次第です。

 皮肉が通じなくて、得意気に「そうっスか。テレるなあ」なんて言っているようだと、今後の道のりは険しそうです。とりあえず「次は仕事でもホメさせてくれよ。期待してるから」とでも言ってお茶を濁しておきましょう。

 今後も仕事への取り組み方に変化がないとなれば、だんだん厳しく接していかざるを得ません。それに反発して逃げたら、その時はその時。たとえ逆恨みを買ったとしても、言いたいことを我慢して、使えない新人にイライラさせられ続けるよりマシです。

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