中江有里 50代の新境地 新アルバム、亡き母を送った曲や男性歌手カバーも!作家活動と「歌」の相互関係

北村 泰介 北村 泰介
書評家、作家、俳優、歌手として活動する中江有里
書評家、作家、俳優、歌手として活動する中江有里

 女優、作家の中江有里が歌手としてのニューアルバム『La chaleur -ぬくもり-』を19日にリリースする。安全地帯など数多くのアーティストに作品を提供してきた作詞家・松井五郎氏のプロデュース作品だ。コロナ禍前から約四半世紀ぶりに歌手活動を再開した中江が、よろず~ニュースの取材に対し、「歌」への思いを語った。

 中江は1973年、大阪府生まれ。89年に15歳で芸能界デビューし、ドラマ、映画、CM、グラビアなどで活躍した。歌手としては91年に飛鳥涼(現・ASKA)提供の「花をください」でCDデビューしたが、93年を最後に歌から離れた。そして、小説やエッセーなどの作家、書評家、コメンテイターとして知られる存在になった。そんな中江を再び歌の世界に導いたのが松井氏だった。

 「松井さんには90年代に4曲提供いただいたのですが、お目にかかったことはなかったんです。2017年に松井さんのご出演イベントに観客として行った際に初めてご挨拶させていただき、それがきっかけで交流が生まれ、『歌をもう1度やりませんか』というお言葉をちょうだいした。歌の世界から25年離れていて、また歌うとは考えも及ばなかったので、最初はきょとんとしてしまいました」

 母の言葉にも後押しされたという。

 「当時、母の病気が発覚していて、余命を告げられる状況でした。母を励ましたいと思った時に『歌』のお話があることを伝えたら、母が『歌っている姿が見たい』と言ったものですから、その言葉が背を押してくれた。動機の一つですね。10代の歌手活動は不完全燃焼で終わってしまったので、もう一度チャレンジしてみようと思い、現在に至ります」

 19年から歌手活動を再開。コロナ禍ではYouTubeで歌う姿を発信した。20年にシングルを配信し、21年に28年ぶり3枚目のアルバム『Port de Voix』、22年に14曲入りフルアルバム『Impression』をいずれも松井氏のプロデュースで連続リリース。今回も同氏とのタッグ第3弾となる。

 「男性ボーカル曲のカバーは歌を再開して、新しくチャレンジしたことの一つだと思います。今回は小田和正さんがボーカルのオフコース『ワインの匂い』、玉置浩二さんの『ひかり』、初めての洋楽カバー曲となる『RAG DOLL』です」。アート・ガーファンクルが75年のソロアルバムに収録した「RAG DOLL」(原曲は米シンガー・ソングライターのスティーヴ・イートン作品)は隠れた名曲。繊細なメロディーに松井氏の日本語詞と、自然体で透明感のある中江のボーカルが重なり合うことで、この渋い選曲が唯一無二のオリジナル作品のように聴こえた。

 さらに、配信シングルの「ともしびの種」など印象的な曲が並ぶ。「今の自分が最良の形で歌う方法」を模索したという。作家活動が「歌」に及ぼした影響はあるのだろうか。

 「それはあると思います。(ラスト)8曲目の『Soyogi』という曲は、昨年、自分が書き下ろした朗読劇のエンディング主題歌でした。作家業と歌手業を両方やっていたから自分で歌うことも叶ったわけで、創作者として恵まれていると思いました。7曲目の『名前のない海』は音楽活動を再開した当時、『トランスファー』(19年、中央公論新社)という私の小説を元に詞を書いてほしいと松井さんにお願いした作品。母の葬儀(20年8月)で流し、母を送った忘れられない曲でもあります」

 50代を迎えて新たな手応えもあった。「イメージを固め、迷いなく、指摘された修正箇所を歌って終わり…というライブ感がすごく強かったので、レコーディングの時間が短かった。そこは前回までと違ったところです。歌で表現することが楽になり、今の自分と歌がしっくりいくようになった」

 7月11日に東京・渋谷の「JZ Brat SOUND OF TOKYO」でライブを行う。新譜や近年の作品に加え、90年代の曲「花をください」と「風の姿」(中島みゆき提供)は今も歌い継いでいる。新境地を披露する夏が来る。

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