子どもの「おこづかい廃止」→家庭内キットで野菜栽培→親に販売して〝経済的自立〟 ユニーク商品化が話題

北村 泰介 北村 泰介
家庭内栽培キットで収穫された野菜を手にする小学女児。家族に販売して小遣いに代えるという
家庭内栽培キットで収穫された野菜を手にする小学女児。家族に販売して小遣いに代えるという

 子どもの小遣いにおいて、その金額の多寡は家庭によってさまざまだが、大人の社会と同様、堅実に使い分ける〝節約派〟と一気に使って次の支給日まで待つ〝我慢派〟に分かれるだろう。いずれにしても、そうした「受身」なスタイルから脱却し、子どもたちが家庭内に設置したキットで栽培した野菜を家族に販売し、その収入を小遣いに代えるという発想から生まれた商品の概要が20日、発表された。「おこづかい廃止」や「子どもの自立・民営化」を掲げた発想とはどのようなものなのだろうか。

 小学生のランドセル重量化が社会問題になる中、キャリーバッグ化して負荷を約90%軽減するスティック「さんぽセル」を2年前に発売して話題になった「悟空のきもちTHE LABO」が関わり、同商品を発想した栃木県の小学生をはじめ、大学生らの開発チームも継続して参加した。

 このアイデアは昨年6月、「日本発ビルゲイツ」というテーマで昨年6月に開催されたMicrosoft社主催の日本最大のビジネスコンテスト「IDEACTIVE JAPAN」で最優秀賞を受賞。運営会社が設立され、「ユニコーンラボ」と銘打たれた新賞品の予約受付を20日から開始した。発売は6月5日予定。

  同社によると、決められた額が事前に支給される「おこづかい制度」に対して「節約と我慢が生まれても、子どもの成長に必要な創意工夫は生まれず、社会で活躍する才能は育たない」という観点から、保護者との意見交換を経て今回の商品が誕生したという。

 「ユニコーンラボ」(税込3万2780円)の対象年齢は5歳から15歳。家庭で野菜を栽培するキットと専用アプリで構成される。子どもは自ら収穫した野菜を親や祖父母などに売り、その収入を小遣いに代える。親も子どもから野菜を買っても、小遣いの負担がなくなるため、「Win-Winの関係を作ることができる」という。担当者は「実証実験のなかで子どもたちが不当に買い叩かれるケースがあり、利用にあたり親アカウントは毎月2000円、祖父母アカウントは毎月1000円をアプリ内に確定チャージすることでフェアトレードを図っています」と付け加えた。

 その行程は(1)「タネから野菜を育てる」(自分たちの収入に直結するので 自発的に植物の成長について研究・観察、工夫をする習慣が付く)→(2)「収穫」(食育の原体験、野菜をラッピングして販売価値を上げる見せ方など「デザイン才能」も培う)→(3)「販売」(マーケティングやプレゼン能力、アプリ内の家族内ECサイトで遠方の祖父母らに通販することでITビジネスの才能や、調理することで料理の才能にも目覚める)→(4)「食べる」(無農薬野菜の価値を知り、苦手な野菜を克服)→(5)「計画・仕入れ」(経営の才能に直結)となる。

 ここで、根本的な質問をしてみた。そもそもの話だが、「野菜」という発想になった理由は?例えば、工作などで、手作りの日用品などを作る選択もあったのではないか。

 同社の開発担当者は、よろず~ニュースの「なぜ、野菜?」という問いかけに対し、「一番の理由は野菜が家計の支出であり、経済活動として家族に貢献しつつ、子供の収入も安定するというのがあります。また、子供の野菜嫌いで悩んでいる親も多く、親側の理解も得やすいと考えました」と回答。「ちなみに、日用品ではないのですが、料理や釣った魚などを売ることもでき、家族内ECサイトなどでも人気商品になっています」と付け加えた。

 その上で、担当者は「今、円安による物価高騰に打開策がなく、節約と我慢で耐える日本社会は『おこづかい制』で育った大人たちの原体験の延長で生まれているのではないかと考えられます」と指摘。「発想力と工夫にあふれた子どもたちの原体験を変え、自由にしてあげることで、20年後の日本が創意工夫にあふれる社会になれば」との期待を込め、「実証実験に参加した子どもたちは『リアルお店屋さんごっこ』で日々、工夫を重ねながら使えるお金も大幅に増え、みんな楽しく続けています」と総括した。

 もちろん、今回の企画に〝世間〟から賛否両論があることは織り込み済み。「ごっこ」で終わるか、日本社会を変える動きの一コマになり得るか。今後の反響が注目される。

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