おもちゃも時代とともに進化して様変わりしてきたが、その中でもロングセラー商品がある。スライムもその一つだろう。どろどろした液体のような物質で、昭和世代の中には子どもの頃に手触りを楽しんだりして遊んだ人も多いのでは。
大阪市内にある玩具総合問屋「株式会社 甲山屋」でも、数種類のスライムを販売している。同社代表取締役社長の甲山洋史氏(43)は「30センチくらい伸びるもの、弾力性のあるもの、昔ながらのどろっとしたものがありまして、材料は若干違います」と説明。ネットで話題になることがあるようで、「YouTuberさんや、インフルエンサーさんが、違うものを混ぜてみるとか、触っている音だけで楽しむとか、新たな遊び方、面白さを伝えていらっしゃるみたいで」と人気の理由を明かした。
同社の創業は1949年。戦後とともに歩んできた。小物玩具を扱う業者はピーク時に大阪で問屋を含めて80社以上あったそうだが、少子化や業者の高齢化などの影響もあって現在は10社前後くらいまで減少。「今はメーカー兼問屋みたいに一括でやっていますね。先代の人たちがこれまでやってきた伝統芸みたいものを、時代とともに少し修正していきながら続けていくのも、受け継いでいく者としての一つの役目なのかなと」。後世に伝えることも使命だと考えている。
小物玩具の主な販売ルートだった駄菓子屋や個人商店が減少し、現在はお祭りなどのイベントをはじめ、量販店や100円ショップなどで販売。また、お子様ランチのおまけや歯医者などの病院で子どもの患者に頑張ったご褒美として、最近では介護施設で紙風船など昔ながらのおもちゃを使っているという。「レトロなおもちゃを販売させてもらっている立場からみると、子どもさんが興味をそそるものは、大きな変わりはないのかなと思います。意外とレトロなおもちゃの方が、派生した遊び方とか変な遊び方、創意工夫をして自分なりの遊び方ができるのでは」と語る。
AR機能を使いスマートフォンと連動した玩具も開発、販売。スマホの画面に映る野菜を、手に持ったプラスチック製の刀で切る玩具などがある。「形は少し変わってくるかもしれませんが、業界全体として昔からあるもので遊んでもらって、面白いと思われる物を作り続けていけたらいいですね」と先を見据える。2025年大阪・関西万博では「健康につながる玩具」として、いくつか出展する予定。いつの時代でも手軽に楽しめるおもちゃを、これからも届けていく。