飼い主がペットを遺棄するケースが報じられている。2月には神奈川県逗子市内で数多くのウサギが放置された状態で見つかり、遺棄された可能性が報じられた。ジャーナリストの深月ユリア氏が同県で保護に当たった警察や動物愛護センターの担当者に取材した上で、保護団体の見解や、弁護士による動物愛護法の解説を聞いた。
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複数の報道によると、2月20日、神奈川県警逗子警察署に同市内で複数のウサギが発見された、という通報があったという。犬を散歩させていた男性がウサギを発見したが、その後も同様の通報が相次ぎ、2月末の時点で逗子署が合わせて30羽もののウサギを一時保護したという。
ウサギたちは人慣れしていたとのことだが、何者かが遺棄したのだろうか。
同県警察本部総務部広報県民課に取材したところ、「報道では約30羽となっていますが、その後さらに数羽見つかり、現在まで合わせて約40羽のウサギが発見されました。ケガしたウサギはいませんでしたが、遺棄されたのではないか、動物愛護法の疑いで捜査中です。遺棄したのは、個人、ブリーダー、ペットショップいずれの可能性もあり、捜査を進めています。現在、ウサギたちの多くは神奈川県平塚市にある動物愛護センターで保護されています」
神奈川県動物愛護センターに取材したところ、「逗子署から30羽ほどのウサギを保護しました。ウサギたちは見た感じは健康に見えます。極端に痩せているとか、歩行困難みたいな状態にはありません。虐待の跡のようなものも見られません。ウサギは大きさから推測するに大人で、子ウサギはいません。警察の捜査や必要な情報確認が終わったら、里親募集する予定です」
やはり何者かがウサギ達を遺棄したのだろうか。
複数のウサギ保護団体によると「2023年は兎年で、ペットとしてウサギを飼うのがブームになった。気楽な気持ちで飼ったら予想以上に世話が大変で遺棄が増えてしまった。飼い主のみならず、ブリーダーやペットショップが売れ残りを遺棄するケースもある」という。
何にせよ、ウサギの遺棄は動物愛護法に抵触する。
都内にある「きさらぎ法律事務所」の福本悟弁護士によると、「うさぎは犬・猫同様に愛護動物ですから、遺棄した者は、動物の愛護及び管理に関する法律により処罰されます。1年以内の懲役またぱ100万円以下の罰金刑です」
この罰則が「軽すぎる」、「法律を改めるべき」という議論もある。福本弁護士によると、「現在の法律ではペットは法律上、『物』とされています。『動物から人間を守る』視点から法律が制定されていますが、『人間から動物も守られるべき』という視点で、ペットとなる動物のそれぞれに合った法規が制定され、適用されることが望まれます」
現行法が「動物から人間を守る」という視点のため、動物の遺棄含めた動物虐待は「国民生活の安心・安全を脅かす」という生活経済事犯に区分される、
警察庁が発表する生活経済事犯に関する統計資料(令和4年版)によると、動物虐待事犯の検挙事数は166件あり、動物遺棄の顕著な事例としては、福岡県で当時40代の男性派遣社員が空き地に27匹の犬を遺棄したというものがある。
命あるものを粗末に扱ってはならない。