「遵守」を「ソンシュ」と読む後輩に間違い指摘したら猛反論!対応のポイントは「適当さ」

石原 壮一郎 石原 壮一郎
画像はイメージです(古永ユウカ/stock.adobe.com)
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 コンプライアンスにより厳しい時代となった昨今、このワードとセットでよく使われる「遵守(じゅんしゅ)」という言葉があるが、会話の相手が「そんしゅ」と自信満々で発言した時にどう対応すればいいのか。この「遵守」に限らず、言葉の読みを間違って覚えたまま、周囲から指摘されることもなく時が経ち、その間違いが本人だけの〝確信〟に変わってしまった相手とどう接するか。「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏がその対応策を提言した。

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 【今回のピンチ】

 後輩が「コンプライアンスをソンシュして~」と言ったので、「おいおい、ジュンシュ(遵守)だろ」と指摘したら、ムキになって「いや、ソンシュですよ!」と反論してきた……。

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 とある大物芸人に関する話題の中で、この発言が飛び出しました。後輩としては、もっともらしいことを言いたかったようですが、読み方が間違っています。

 「いいから、今すぐスマホで調べてみろ!ジュンシュだったらどう落とし前つけるんだ。間違えるのはいいとして、間違えを認められない人間は最低だぞ!」

 本音としては、このぐらい言ってやりたいところです。しかし、実際に言ったら、相手はキレたり、心を閉ざしたり、パワハラ呼ばわりしてきたりなど、面倒な展開にしかならないでしょう。

 そもそも、強く言ったところで、聞く耳を持っていない相手には届きません。せっかくの親切を受け止める気がないなら、どこかで恥をかこうがどうしようが、それはもう「どうぞご勝手に」という話です。

 また、このケースは大丈夫ですが、言葉をめぐる「正解」は、どんどん移り変わるのが怖いところ。自信満々に「間違い」を指摘したのはいいけど、じつは自分が間違っていたなんてことになったら、とんだ赤っ恥です。

 あれこれ考えると、この状況で重視したいのは「いかに適当にあしらうか」だと言えるでしょう。

 「うん、じゃあ、それでいいや」と露骨に匙(さじ)を投げてもいいんですけど、万が一「間違いを認めないなんて、往生際の悪い先輩だ」と思われたら不本意です。「なるほど、何事もオリジナリティは大事だよね」と遠回しな皮肉を言っても、この後輩のオツムでは、何を言われているのか理解できないでしょう。

 いっそのこと「そうか、最近は『ソンシュ』なのか。○○君は漢字に強いんだね」と持ち上げるもよし、「きっと、どっちもアリなんだね。『ソンシュ派』も『ジュンシュ派』も、それぞれが信じる道を生きていこう」と宣言するもよし。どちらも、心の中で意固地な後輩を笑うことができます。あえて大きめの声で言って、ほかの同僚に後輩のマヌケっぷりを知らしめるのも一興。

 いつの日か、その後輩も「えっ、ソンシュじゃなくてジュンシュだったのか」と、正解を知る日が来るでしょう。そのときに、この時のやり取りを思い出して、ムキになった己の愚かさに気付いてくれるかもしれません。適当にあしらうことで、いつの日か自分が知らないどこかで、こっそり植えた種が花開く光景を想像する楽しみも付いてきます。

 一方で「あの先輩、俺をからかいやがったな」と恨みや怒りを抱かれる可能性も大。まあ、この後輩と長い付き合いになるとは思えないし、こんなヤツにどう思われても気にする必要はありません。

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