2024年のNHK大河ドラマは「光る君へ」です。平安時代中期に生きた女性・紫式部が主人公です。式部は、長編物語『源氏物語』を書き上げたことで知られています。紫式部を演じるのは、女優の吉高由里子さん。
そして、同ドラマの重要登場人物となるのが、藤原道長です。自らの娘を次々と天皇の后とし、権勢を誇った公卿。「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の かけたることも なしと思へば」という望月の歌を権力の絶頂期に詠んだことは、日本史の教科書に必ずと言ってよい程、記されています。
その道長を演じるのは、柄本佑さん。父は俳優の柄本明、母は女優の角替和枝、弟は俳優の柄本時生であり、連続テレビ小説「あさが来た」(2015年)では、陰気臭く、無愛想な眉山惣兵衛を演じていたことを思い出す人もいるでしょう。独特な演技をする柄本佑さんが、どのように権力の座に昇り詰めていく道長を演じるのか、今から楽しみという人もおりました。私も楽しみにしています。
吉高さん演じる紫式部(劇中では、まひろ)が、どのようにして道長と接点を持ち、最終的に『源氏物語』を書き上げていくのかがメインテーマとなるのでしょう。しかし、同ドラマの脚本家の大石静さんが発表会見において「藤原家が摂関家として権力を誇った平安王朝というのは、山崎豊子さんの『華麗なる一族』と映画『ゴッドファーザー』を足して3倍にしたような権力闘争と面白い話がいっぱいある」、平安王朝の権力闘争といった「セックス・アンド・バイオレンス」を描きたいと語ったように、貴族同士の暗闘、政治闘争、男女の愛憎劇も要注目です。
平安時代中期が舞台ということで、大河ドラマが得意としてきた合戦シーンが描かれることはおそらくないでしょう。文化人を主人公に据えたということで、本作は「文化系大河」とも呼ばれています。が、本格的な合戦シーンはなくとも、貴族の政治闘争をリアルに時にユニークに描いていくことによって、視聴者の興味を惹きつけることはできると思います。2022年に放送されて話題となった大河ドラマ「鎌倉殿の13人」も、個性的で魅力的な有力御家人同士の対立と没落が後半で描かれていました。
「光る君へ」にも、道長のライバルとなった藤原伊周やその弟・隆家など、キャラが立つ人物が多数登場します。そういった人物をいかに魅力的に描くか。それが、ドラマが成功するか否かの大きな鍵であると私は感じます。俳優の演技力と脚本の妙味が相俟ってこそ、素晴らしいドラマが完成すると思っているからです。「光る君へ」、期待しています。