センダイガールズプロレスの後楽園ホール大会が16日に行われ、スターダムに所属する〝リングの妖精〟なつぽいが、〝怪物〟橋本千紘と初の一騎打ちに臨んだ。激闘の末に11分37秒、オブライト(ジャーマンスープレックスホールド)で敗れた。
壮絶に散った。体重で自身より40キロ以上重い橋本をジャーマンで投げ捨てた。大歓声が鳴りやまない中、直後にド迫力のラリアートを食らい、続いてオブライトで3カウントを許した。橋本から健闘をたたえられ、拍手を全身に浴びリングを降りたなつぽい。顔を紅潮させながらも、その表情には手応えが満ちていた。「最強を探してこのリングに立ちました。最強の橋本千紘にボコボコに負けたけれど、つかんだものはたくさんあります。私にとっての最強を見つける旅。最高のスタートを切れました。どこまで行けるか楽しみ」。そう言って前を向いた。
アイドルレスラーの壁を破った。橋本の「強くなりたい理由はいくつあってもいい」というツイートを目にし「私の強さ、最強って何だろうと自分に向き合うきっかけになりました」と触発された。ツイッターを通して呼びかけた対戦が、急ピッチで実現。「私はスターダムでは強さの象徴ではない。私も強くなりたいというよりも、かわいくなりたいと思っていた。だからこそ、なつぽいって何なんだろう、皆が思う最強と、なつぽいが思う最強は何か違うのかもしれないと思って、それを確かめる夏にしたかった」と、思いを語った。
試合では軽々と持ち上げられ、場外に投げ捨てられた。丸め込もうとするも強引な投げ技で返された。それでもエルボー合戦では逃げなかった。回転蹴りを連発し、得意技のフェアリング・リングを決めた。雪崩式ブレーンバスター、スピアーを食らったが、カウント2ではね返した。そしてついに体格差をはねのけ、ジャーマンを決めたのだった。「投げましたよね。負けん気、根性は私の強さ。それが少しでも証明できたと思うとうれしい」と笑顔を見せた。
橋本を「怪物ですよね。大きいだけでなく、筋肉が堅くて鈍器で殴られているみたい。場外にあんな風に投げますか。受け身が取れないくらいにポイ捨てされました。ハイスピードで先手を取るつもりが、(橋本が)大きくて強いのにメチャクチャ速くて驚きました」。スピードで翻弄するプランは崩壊したが、その分気持ちを前面に出したことで、会場の支持を集めていった。
最強を確かめる夏と位置付けるなつぽい。7月2日にスターダム横浜大会で行われた安納サオリ戦に続いて、テーマに満ちた一騎打ちを終えた。所属するスターダムでは、夏のシングルリーグ戦「STARDOM 5★STAR GP」が控える。身長150センチ、体重47キロの小柄な体。「体格は変えられない。それでも、私の最強とは、プロレス界で唯一無二の存在になること、と見え始めていました。橋本さんとぶつかって、より確信が持てたところがあります。この過酷な夏が終わる頃には、一皮むけて最強に近づいていると思います」と先を見据えた。
橋本は「強さを目指すヤツは最初から伝わる。あのかわいさがあって、なつぽいは最強ですよ」とたたえつつ、「5★STAR、私とシングルマッチをやったからには優勝してほしい。また戦いたいと思える相手でした」とゲキを飛ばした。
試合後のリング上では橋本と言葉を交わしていたなつぽい。「ある約束をしたんですよ。ちゃんと覚えていて欲しいな」とはにかんだ。そして橋本のゲキに「5★STARは私のものではない、と思っていた私、お客さんの目があると思いますが、絶対優勝して、また橋本さんと戦いたい」と呼応した。先を見据える瞳を一層強く輝かせた。