盗撮という犯罪行為が増加傾向にあるという。ジャーナリストの深月ユリア氏が専門家を取材し、その実態や防犯対策などについて話を聞いた。
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警視庁の犯罪発生統計データによると、昨年1年間の全国の盗撮行為の検挙件数は5737件で、前年より718件も増加している。なぜ盗撮が増えているのか。盗聴器捜査に力を入れて盗撮犯罪の啓発に力を入れている北海道の大手探偵事務所、一般社団法人「北海道探偵防犯業連合会」の代表、会沢一仁氏に取材した。
-盗撮の実態とは。
「警視庁の統計は検挙したものですが、被害届を警察に届け出す人と出さない人がいます。気がつかないうちに盗撮されている場合もありますので、実際の盗撮は統計の2-3倍はあるのではないでしょうか。盗撮が増えた理由はカメラ製造技術が上がったからでしょう。 ネジくらいの超小型カメラ、ボールペン型のカメラ、赤外線つきの透けて見えるカメラがあります。その多くは中国製かと思いきや、実は国内品です。本来はこのようなカメラには製造番号を入れたり、購入の際、身分証明書を提示すべきだと思いますが、日本はなんのルールも規制もないのです。逆に中国ではスパイ防止のために規制しています」
-どのようなシチュエーションで盗撮が行われるのか。
「最近、増えているのは、小中学生の修学旅行先の旅館での盗撮で、気が付かないうちに盗撮されているケースです。例えば、一般客を装った犯人が、浴場に盗撮カメラを仕込んだ化粧品やシャンプー類を持ち込むこと。盗撮行為が行われる場所で1番多いのは浴場、その次は水泳・新体操などのスポーツ競技場。スポーツ競技場ではアスリートが盗撮される事例も増えています」
「(派遣型性風俗業の)デリバリーヘルスに勤務する女性を狙った盗撮もあります。客が先にホテルに入ってカメラを仕掛けて、性行為を撮影し、販売するという悪質なケースです。小中学生を盗撮した映像は児童ポルノとして、国内のみならず中国・アジアで販売されます。弊社が国内外で流通している児童ポルノを調査したところ、その市場は年間100億円くらいあると推定します。 特に、修学旅行の入浴盗撮は特に人気があり高値で売買されております。一般人がやっているケース、ヤクザや中国・アジア系の盗撮犯罪シンジケートが組織ぐるみでやっているケースとがあります」
-ところで、探偵事務所が不倫・浮気調査などでターゲットを隠し撮りすることがあるが、それは合法なのだろうか。
「一般人がやる場合は迷惑防止条例違反になりますが、探偵事務所は公安委員会に認可を受けています。資料は証拠として使われるので合法です。しかし、中には撮影した映像をターゲットに見せて恐喝する悪質な事務所、依頼人とターゲットから二重取りする悪質な業者もいるので注意が必要です」
-盗撮犯罪から身を守るためにはどうすれば良いか。
「これだけ多くの盗撮犯罪が、気が付かないうちに行われていることを、広く知って欲しいです。私どものスローガンは『犯罪から女性と子どもたちの未来を守る』ことですが、被害者であるにも関わらず、盗撮された映像によって社会的に追い込まれて、退職に追い込まれた女性がいます。また、修学旅行先の盗撮は現役の学校名等のソース付きでしたらさらに高値での売買となります。学校名が分かると個人を特定しやすくなり、ストーカー犯罪が起きるリスクもあります。修学旅行先のホテルは盗撮への防犯に務めている温泉施設ホテルを宿泊先として選定して欲しいものですね。警察は事件が起きてからでないと動かないので、公共施設に探偵事務所が抜き打ちで入れるような法整備が整えば防犯にもなると思います」
実際にネジ型やボールペン型の盗撮カメラが宿泊する旅館やスポーツ施設に搭載されていたら、一般人では気がつくのは困難だ。未然に防げるような法整備が整えばよいのだが…。