今年3月にピン芸日本一決定戦「R-1グランプリ2023」で優勝した田津原理音(30)が自身初の作品展「どんな人生。」(6月24日~7月2日、大阪・LAUGH&PEACE ART GALLERY)を開催する。日本一のピン芸人に輝いたが、学生時代を「めちゃくちゃスベっていた。面白かった瞬間がない」と振り返る。田津原に学生時代、そして芸人を志したきっかけを聞いた。
長年磨いてきたフリップ芸を発展させた、トレーディングカード開封ネタでR-1優勝。しかし、直後の記者会見では「平場が銀河一弱い」と告白。その歴史ははるか昔までさかのぼる。「学生時代から平場が弱かったんで、めちゃくちゃスベっていた。面白かった瞬間がない」と笑いを誘いながら回想したが、その裏には苦い記憶もはらんでいる。
「小学校で少年野球を始めて、そこでめちゃくちゃいじめられてたんですよ。ずっとおちゃらけていたので、それで浮いてしまって『お前なんやねん、キモいねん』みたいな。僕が6年生の時に1年生に『うわっ、理音や』って言われた。1年生にまでとどろいてたんですよ、いじめられっ子として」
長年続いたいじめにも「底辺グループ同士で仲良い友達はいたので、毎日遊戯王カードで遊んでいたのが楽しかった。いじめられてはいるけど、しんどくはなかったですね」と恨みや憎しみは湧いてこなかったという。
中学に上がり心機一転といきたかったが、いじめっ子たちも同じ中学に進学。しかし、いじめっ子との関係にある変化が生じた。
「変わらず野球部に入ったんですけど、手首を骨折してしまって。ピッチングマシンにボールを入れる役割しかできなかった時に、(いじめっ子が)練習をサボりたいから『その役、俺もやるわ』って2人でやってたんですよ。そこでしゃべってたら『お前、おもろいな』ってなったんです。僕自身は何も変わってないですけど、初めて深くしゃべったからか、めっちゃ仲良くなって」
一人と仲良くなった途端、他のいじめっ子にも話しかけられるようになった。「根に持っていたわけでもないので、みんなと仲良くなって、最終的には生徒会長になりました」と明かした。ちなみに、会長選挙の応援演説はかつてのいじめっ子の一人が務めたという。
ちょうど同時期に芸人を志した。中学3年生の時に見た「M-1グランプリ2008」がきっかけだ。優勝したNON STYLEの石田明(43)が涙を流す姿に心を揺すぶられたという。「人を笑かす職業で泣いてるやんって。こんなに真剣にやってるんやっていうのをめっちゃ感じて」と回顧。気付けば母親に「俺、お笑い芸人になりたいかも」と打ち明けていた。
漫才師を夢見た中学生はそれから約15年後、ピン芸人の頂に立った。いじめられていた小学生時代、唯一の楽しみだった「遊戯王」をまねたトレーディングカード開封ネタで。
今回の作品展では、そのトレーディングカードや寄席で使用しているフリップなども展示。5月初旬にオファーを受け、急ピッチで準備を進めている。「僕のことを知らない人も絶対楽しめるようになってますし、僕が“どんな人生”を送ってきたかが分かると思います」とアピール。目標動員数を1400人に定めつつ、「笑って終われたら、成功です」と笑顔を見せた。
◆田津原理音(たづはら・りおん)1993年5月25日生まれ。奈良県橿原市曽我町出身。吉本興業所属。「M-1グランプリ2008」がきっかけで漫才師に憧れを抱き、2012年にNSC35期に入学。卒業後ほどなくピン芸人となり、フリップネタで頭角を現す。23年、フリップを発展させたトレーディングカード開封ネタで「R-1グランプリ2023」優勝。特技は写真撮影、ポスターデザイン、イラスト。身長175センチ。血液型B。