性的少数者の就活「面接でカミングアウトすると不採用」 職場の当事者75%は告白せず 企業側の声は?

北村 泰介 北村 泰介
昨年誕生したLGBTQ+の声を届けるライフマガジン「BE」創刊号。ジェンダーレスモデルの井手上漠が表紙を飾った。第2弾は今年6月発行予定
昨年誕生したLGBTQ+の声を届けるライフマガジン「BE」創刊号。ジェンダーレスモデルの井手上漠が表紙を飾った。第2弾は今年6月発行予定

 19日開幕の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)を前に、性的少数者への理解増進を図る法案の成立を巡る与野党の議論が続いている。先進国の中で日本は「LGBTQ+」に対する理解が後れを取っていると指摘される中、民間レベルでは実際にどのような環境になっているのだろうか。性的マイノリティーの声を編集したライフマガジン「BE」は1年ぶりに発行される第2弾で、雇用側の企業や職場内の同僚・上司に向けた誌面を制作することになり、15日まで特設サイトで現場の声を募集している。担当者に話を聞いた。

 「BE」は求人検索エンジン「Indeed」の日本法人「Indeed Japan」によって昨年6月に創刊された無料誌。求職活動や企業で働くLGBTQ+の人たちの思いを集約し、当事者である識者が編集に参加している。

 今回のプロジェクト開始に当たって、全国の3万643人から抽出したLGBTQ+当事者1000人を対象にした意識調査を3月に実施。当事者の約4割が「職場で生きづらさを感じる」、3割以上が「性自認や性的指向がきっかけで、やりたい仕事に就くことを諦めたことがある」と回答した。

 Indeed広報は「職場においても、仕事を探す段階でも、当事者は不安やストレス、生きづらさを感じ、働く上で障壁や偏見が存在していることが示唆されました。この結果を受け、当事者だけでなく、雇用側の同僚・上司に向けた『BE』を制作することにしました」と意図を説明した。

  LGBTQ+当事者への調査結果の一部を抜粋すると、「職場で生きづらさを感じるか」という人は当事者が39・1%で、非当事者(26・8%)の約1・5倍に。注目すべき点は、働く当事者の7割以上(75・8%)が「職場でカミングアウト(自身の性自認や性的指向を誰かに打ち明けること)をしていない」という回答だったこと。当事者の3割以上(31・5%)が「やりたい仕事に就くことを諦めた経験」があり、そのうち8割近く(78・1%)が「応募前に諦めた」という結果だった。

 その理由の1位は「男性らしさ・女性らしさの決めつけなど、多様な性のあり方について理解のない発言をされた」(17・1%)。次いで「求人を調べているとき、採用企業にLGBTQ+に対する制度があるか分からなかった」「勤務中の髪型、化粧、服装(制服着用など)などの要件が希望と合わなかった」が共に13・1%と続く。

 この結果を受け、Indeed広報は「職場ではLGBTQ+当事者の存在が『見えづらい』状況が考えられます。当事者がいる前提での環境づくりやコミュニケーションが進みにくいことで、職場で感じる不安や生きづらさにつながっているという可能性も考えられます」と分析した。

 当事者が苦痛に感じた具体例も寄せられた。

 「面接でカミングアウトしたところはすべて不採用。カミングアウトしなかったところはすぐに採用された」という現実に加え、「就活で面接のお願いのために電話をし、こちらからカミングアウトした途端に『うちの会社は〝そういうの〟はいらないから』と笑われて電話を切られた」、「異性の恋人を前提として、恋人の有無を聞かれたり、社内のバーベキューパーティーに恋人を呼ぶように言われる」という証言もあった。

 こうした声に対し、企業側はどのような姿勢を示すか。調査結果は6月下旬発行予定の第2弾誌面で公表されるが、当事者は職場に対して「多様性における配慮に欠けた言動をしないように、定期的に社内外で講習などを行なってほしい」「『LGBTQ+という特別な人たちがいる』のではなく『人には人の数だけ性がある』ことを理解する」「自分の価値観も他人の価値観も受け入れられるべきものだと、企業や会社の人が発信して欲しい」といった声を寄せている。当事者が「やりたい仕事を諦めないために企業や職場に求めること」の1位は「差別的な発言・行動をする上司・同僚がいない」(24・7%)だった。

 Indeed広報は「企業や職場において多様な性のあり方に対する理解や意識の浸透、そしてカミングアウトの有無に関わらず、働きやすい制度や環境が重要と考えます。企業の皆さんからもさまざまな声を集め、よい事例も幅広くお伝えすることで、LGBTQ+支援に取り組みたいという企業の皆さんのヒントとなり、誰もが働きやすい職場環境の実現につながれば」と説明した。

 性的少数者に対する理解増進法案のG7前の成立は困難とみられているが、こうした過渡期において、企業側の見解が注目される。

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