車体をアニメ、ゲーム等の人気キャラで装飾した「痛車」の界隈で、唯一無二の〝立体痛車〟で存在感を示すここのつ氏が、4年ぶり4台目となる新車を完成させた。4月30日まで千葉・幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議2023」で展示された。
色鮮やかなペイントが施された痛車が並ぶ「超痛車天国」のブース。ここのつ氏は「人とは違う、誰もマネできないことをやりたくて立体痛車を始めました。大変すぎるので、僕以外にはできないでしょう」と胸を張った。
ツインテールが印象的なぴくちぃ式ミクの等身大フィギュアが荷台に鎮座され、特大のバックドアガラスはショーケースのようだ。両サイドドアもミクの立体造形で彩られ「立ち位置で見た目が変わるので、調整するのが大変だった」と苦心した。ボンネットなど車体のペイント、内装の鮮やかさに目が向かないほどの大作。ワゴン車を改造し、製作に2年かかった。初音ミクから派生したぴくちぃ式ミクにした理由を「製作に時間がかかるので流行のキャラだとブームが終わることが怖い。ミクは廃れないものなので」と説明。以前には「魔法少女まどか☆マギカ」から、まどかの立体痛車が話題を呼んだ。
長野で建築業を営むここのつ氏。18年程前に痛車歴をスタートさせ、12年前に立体痛車に着手したという。立体物は建築材のスタイロフォーム、FRP、パテに、「秘密です」と話す特殊な素材を加えた4種類で製作。「業者に頼ることもできない。ヤスリをかけることから全て自作です。ニコニコ超会議に間に合わせるため最後は追い込みました」と今年3月下旬に完成させた。「費用をよく聞かれますが、材料調達も製作も自分でやったので分からない」と話した。
サイドドアの立体造形物など、走行中の安全性は大丈夫なのだろうか。「車検にも通っています。これまで何回も運転中に警察に止められましたが、問題になったことはありません」とキッパリ。「僕は陶芸家や、職人のような気持ちでやっています」とプライドをのぞかせつつ「しかし、作業自体はツラい。しんどかった。大谷翔平選手はトレーニングでも楽しんでやると聞くので、僕はまだまだだと思いますね」。今春の野球・WBCで日本を優勝に導いた殊勲者を引き合いに出し、謙虚な一面も見せた。
会場に並ぶ痛車の数々。「シールを貼っただけ、ましてや業者に頼んだようなものとは違いますよ」と立体痛車への誇りを見せた。「だけど、僕よりも人が集まる車があって。思っていたのとは少し違いました」と寂しそう。独創性と技術、労力の大きさと、結果が比例しない厳しい現実が浮き彫りになった。
趣味は旅行で、ゴールデンウィーク中に車で遠征する予定だという。「天気予報が悪いので、このままだと別の車で行くことになります」とここのつ氏。悪天候では、車体に問題が生じるのだろうか。「性能的には大丈夫です。ただ、雨だと汚れますから。サービスエリアでは写真を撮られるので、汚れた姿だとかわいそうな気持ちになります」と語った。この立体痛車が街中を走れば、注目を集めることは間違いないだろう。