【漫画】お気に入りの盃が見せた未来の姿「不思議な別世界の筋道を共感したい」異色の不思議な作品に注目

橋本 未来 橋本 未来

 骨董品屋でペアの盃を購入した女性が、後日その品を返したいという。店主が理由をたずねると、毎夜2つの盃を並べ、片方だけにしかお酒を注いでいないにも関わらず、もう片方にも酒が満たされ、その表面に見知らぬ男性の顔が映っていた……。それをきっかけに、女性は現実とは思えない出来事に遭遇していく……。その男性は何者なのか?そして、この盃にはどのような意味があるのか?古き良き物語をヒントにした作品『盃の話』。

 SNSに数多くあるホラー漫画の中で、“怖くない(たまにちょっと怖い)不思議の話”をコンセプトにした新たなジャンルの作品が注目を集めている。作者は、ポーランドで働く傍ら、漫画創作を行うようになり、現地で漫画作品なども発表している、かんさびさん(@kansabi_kk)。地方に伝わる伝承や風習、昔話からヒントを得て創作される作品は、これまでにない独自の世界観を構築し、中には50万に迫るインプレッション数を記録する作品も描いている。そこで、これまでにない新たなスタイルで描かれるこの作品が生まれた背景や、創作の裏側について、作者であるかんさびさんに話を聞いた。

誰かが体験したようなリアリティを

 かんさびさんが、こうした独特な作風を描くようになったのは、幼い頃の経験が影響していると話す。「小さい頃から怪談や昔話が好きだったので、アニメや漫画もそういうものを好んで観ていましたね。また、時代劇など昔の日本の雰囲気も好きで、自分でそういった雰囲気の作品を作りたいと思っていました。ただ、不幸で悲しい幽霊の話や怖い話でぞっとしてほしいというよりも、”不思議な別の世界の理”の魅力を誰かと語り合いたい、一緒にこの好みを共感してくださる人たちと出会いたい、という気持ちで作品を作り始めました」と、作風の原点について教えてくれた。

 これらの作品の特長は、信じられないストーリーの中にもリアリティを感じさせられるところ。この部分について、かんさびさんは「地方に伝わる伝承、風習、昔話からヒントを得ており、さも誰かが体験したような、もしくは昔から語られているような雰囲気を出すことをこころがけています。そして主人公の顔を出さず、読者の方自身が主人公になって体験してくださるよう、ストーリーを作っていますよ」と、話す。

 また、作画についても独特で、「日本の色や、昔からある伝統的な絵画方法がとても好きで、自分でも作品に取り入れることはできないかと、これまで絵を描きながら模索してきました」と、日本に根ざした表現を大切にしているという。

 「これからも古き日本をベースに作品を描いていくこと。そして、現在住んでいるポーランドなどの東欧の古い伝承や風習も面白いので、それもお話に入れていけたらいいなと思っています」と、かんさびさん。新たなジャンルを開拓し、次にどのような作品を発表するのか、楽しみでならない。

<かんさびさんInformation>
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