2018年に朝日放送を退社し、eスポーツキャスターに転身した平岩康佑氏が、17日から3日間にわたり開催されているアプリとリアルカードゲーム「Shadowverse」の年間王者決定戦の大会MCを務めた。〝電撃転身〟から5年目を迎えようとする同氏は、当時の決断について「間違いなく成功」と胸を張った。
「ギリギリのところを拾う準備ができていた!本当にその一手の差がゲームを決める。それが『Shadowverse』!」。100時間以上に及ぶプレイから身に付けた各ゲームに対する知識や理解、選手への取材で得た情報を的確に落とし込む実況が、視聴者の熱気を高める。
現在、実況を担当しているゲームは約10タイトル。年間の休みは5日ほどで、移動中もゲーム配信や後輩アナウンサーの実況をチェック。防水携帯を浴室の壁にかけ、シャワーを浴びながらアプリ「Shadowverse」をプレイするなど〝ゲーム漬け〟の日々を送っている。多忙を極めるが、その表情から充実感がうかがえる。「間違いなく成功してるなと思います。日本のeスポーツ業界自体もすごくいい形で成長してるんじゃないかなと思います」と手ごたえを語った。
平岩氏は11年に朝日放送にアナウンサーとして入社。高校野球、プロ野球などを担当し、17年には優秀なアナウンサーに与えられるANNアナウンサー賞を受賞した。
転機が訪れたのは17年冬。以前から興味があった「Shadowverse」の番組出演オファーを受け、ゲーム実況に初挑戦した。普段と大きく異なる状況に「甲子園の実況デビュー以来に緊張した」と振り返った。18年春に韓国で開催されたeスポーツ大会を現地観戦。熱気を目の当たりにし、決意が固まった。「お客さんのエネルギーがすごい。立って、声を枯らしながら選手に声援を送っていてすごいエネルギッシュだったし、輝いて見えた。日本でも同じことやりたいと思った」。帰国した翌日、退職届を提出。高校野球100回大会の実況を担当できるチャンスがあったが、「僕としては早くやりたいっていうのがあった。誰か同じような人が出てきたらほんとに後悔すると思った」と明かした。
どれだけ準備をしていても「エアプ」「分かっていないな」という批判的なコメントをもらうことがあるが、真摯(しんし)に受け止めている。「寝る前とかエゴサとかしてます。メンタル的には大丈夫。むしろ参考にしています」。
強メンタルはアナウンサー時代の経験から。プロ野球担当の時、甲子園からの帰路の電車で阪神ファンから「おまえのせいで負けたんや」「下手くそやな、実況」など非難を受けた。「それに比べたらありがたい…」と苦笑いを浮かべた。
先日、3月いっぱいで日本テレビから退社することが分かった篠原光がeスポーツ関連の仕事に挑戦することを表明。業界全体の注目度が高まっている。eスポーツビジネスを軸とする会社「ODYSSEY」の社長として、平岩は「5年以内にプロ野球を超える興行にしたい」と掲げている。「生で若い人が何かを見続けるのって本当にeスポーツってなっているんです。アメリカで今、月間視聴者数が一番多いのって、NFL超えてeスポーツなんです」と説明。「そういうことを考えると、これからどんどん力がついていくと思うし、それに見合うだけの選手たちの努力とかを理解して見るとeスポーツとしての面白みが増してくるし、ゲームを遊ぶことに結局つながる。それを含めると全然既存のプロスポーツに勝っていけるんじゃないかなと。その一助になればなと思っていろいろやっております」と言葉に力を込めた。