英国のコロナ事情、ロンドン在住の日本人女性に聞く「医療がカオス」要因にEU離脱も?人手不足が深刻

深月 ユリア 深月 ユリア
イメージ画像です(denisismagilov/stock.adobe.com)
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 英国のコロナ禍が深刻な状況だという。ジャーナリストの深月ユリア氏がロンドン在住の日本人女性に現地の様子を聞いた。

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 今冬、イギリスでは新型コロナウイルス感染が拡大している。ジョンズ・ホプキンス大学(米ボルチモア)のシステム科学工学センターが発表した「新型コロナウイルス リアルタイム情報」によると、(コロナ禍における英国での)累計死者数は23日時点で20万人を越えているという。

 イギリスのロンドン在住の日本人ジャーナリスト、チカコ・オオサワ・ホロウィッツ氏によると、「イギリスはロックダウン明け直後に新型コロナの感染者数発表もやめています。今まで無料だった簡易検査薬も薬局で9ポンド(約1450円)以上で売られるようになりました。『買ってまで検査したくない』という方が多いです」

 しかし、このような「放置」政策は失敗し、現在、イギリスの医療は「カオス」状態にあるという指摘もある。ホロウィッツ氏は次のように語る。

 「去年秋頃からインフルエンザもはやり、インフルエンザなのか新型コロナなのか不明のまま、(国民が相互に)感染し合っている状態だと思います。医療崩壊が進み、年末から医療関係者のストが続いていて、病院に行っても治療もしてもらえないなど、少々カオスですね」

 「救急車は、12月の一番忙しく人手の少ない時で、90分以上待たなければならない状況でした。都心でも田舎でも、救急車がなかなか来ないので、多くの方が自力で病院に行きます。自分が運転できないのなら家族親戚、近所の人に頼んで連れってもらっています。また、緊急であれば、999番(警察、消防、救急いずれもつなげる緊急通報)に電話するという方法もあります」

 医療が「カオス」状態となっている原因について、新型コロナとインフルエンザの感染爆発のみならず、イギリスがEUを離脱し、海外からの労働者が激減したことも一因だという。

 「イギリスの医療現場はアングロサクソンの白人医師や看護師よりも欧州やインド、看護師はフィリピンなどから移住していた人が多かったのですが、EU離脱の影響で、イギリスに滞在延長できない人たちがいなくなってしまったから、医療のみならずあらゆる業種で人手不足です。農家は困っているという話も聞きます。さらに、エネルギー不足で、物価が高騰、賃金が上がらず、デモを長期期間やれば、救急隊もおらず、医者も看護師もいないのであれば、医療崩壊になりますね」

 医療の「カオス」状態で、 高齢者は警戒して屋外でもマスクをつけている人もいるが、若者は屋内でもマスクを着用していない人も多いという。いずれにしても「医療がカオス」状態にも関わらず、イギリスの街はにぎわってそうだ。同氏は「欧米人はたくましいので、しれっと生きてる状態なのかもしれません」と私見を述べた。

 また、同氏は「中国の新型コロナの感染拡大については時々報じられるのですが、自国の新型コロナについては報じられません。イギリスのメディア報道のトピックは、首相が代わったこと、ウクライナ戦争、エネルギー問題、フィリップ皇太子崩御、エリザベス女王のジュビリー記念、エリザベス女王の崩御、チャールズ王誕生、ハリー王子の暴露本、スコットランドやアイルランド問題等ですね」という。

 イギリスはジョンソン前首相の時から、厳しいロックダウンから「経済重視・新型コロナ軽視」の政策に移行したという。だが、コロナの「放置」は、多くの労働力でもある人命が失われることにつながる。そもそも、国民の命ありきの経済ではないだろうか。

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