「人助け指数」で日本は世界ワースト「ヘルプマーク」酷似グッズ騒動は認知度の低さ象徴、米良美一も訴え

北村 泰介 北村 泰介
障がいなどを持つ人の存在を伝える(左から)「白杖SOSシグナル」「耳マーク」「ヘルプマーク」
障がいなどを持つ人の存在を伝える(左から)「白杖SOSシグナル」「耳マーク」「ヘルプマーク」

 シンガー・ソングライター椎名林檎のアルバム付属グッズが「ヘルプマーク」に酷似しているとしてネットで〝炎上〟したことは記憶に新しい。ヘルプマークの対象は難病患者だけでなく、義足や人工関節を使用している人、妊娠初期の女性など、外見からすぐに分からない状態であっても、公共交通機関などで援助や配慮を必要とする人たちが周囲に知らせるマークのことだが、日本ではまだ十分な認知に至っていない現状が今回の騒動によってあぶり出された。

 この問題への理解を促進することを目的とし、「希少疾患と社会、私たちが気づきあうためのヒント」と題したイベントがクリスマスイブの24日に都内で開催され、自身も希少疾患を抱えながら歌手として活躍する米良美一や識者が参加して意見を交換した。

 「ヘルプマーク」は赤地に白抜きのハートと十字マークが上下に配置されている。今秋、SNSで物議を醸した椎名のアルバム付属グッズ(カードケース)では、赤地の上部に白十字があるところまでは同じで、下部のハートが陰陽マークの入ったリンゴのデザインになっていた。10月に公表されると「酷似」という指摘や意図を問う声などが高まり、販売元のレコード会社がデザイン改訂と11月30日リリース予定だったアルバムの発売延期を発表する事態となった。

 逆に言えば、「ヘルプマーク」の存在がクローズアップされる契機になった。2012年に東京都が作成した同マークを身につけている人を電車やバスで見かけた時には席を譲り、困っている人には声をかけるという行動が求められている。

 イベントでは、そうした背景を踏まえて、英国の慈善団体「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」が10年から毎年発表している「世界人助け指数」という国別ランキングでのショッキングな結果が紹介された。CAFによると、21年の調査で日本は114か国中で最下位だった。今年の最新調査でもワースト2位の118位。その内容は「この1か月の間に~」という条件で、「助けを求めている見知らぬ人を助けたか」「寄付をしたか」「ボランティアをしたか」という3項目について調査した結果となる。ちなみに、2年連続で1位がインドネシア、2位がケニアだった。

 この結果について、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授は「日本では公式に何かやるとなると『おもてなし』をするのですが、非公式だと尻込みしてしまう人が多いような気がします。SDGsの2030年に向けた目標のコンセプトは『誰一人、取り残さない』。社会の中で取り残されている人に手を差し伸べること。そこへの『気づき』が(目標への)足がかりになるように思います。多様性のある、いろんな人がいるということを互いに尊重し合うことが大事。ただ、『気づく人』はわりといるのですけど、さらに『大丈夫ですか』と実際に声をかける第2段階の行動ができるかどうか」と問題提起した。

 会場ではヘルプマークをはじめ、さまざまなサインやマークを紹介。例えば、緑の矢印で示した「耳マーク」は聴覚障がい者への配慮を示し、杖を持った人の下に「SOS」と描かれた「白杖SOSシグナル」は「白杖を頭上50センチ以上上に掲げた視覚障がい者がいたら、それは助けを必要としているサイン」となる。「ほじょ犬マーク」「手話マーク」「筆談マーク」、さらに「マスクの着用が難しい」体調であることを示すマークなど多種多様で、当事者と周囲にいる全ての人が情報共有すべきシグナルとなるのだが、まだ認知度は低いという。

 蟹江教授は「必ずしも目には見えなくても、障がいがある方はたくさんいます。それに『気づく』きっかけの一つがこのようなマーク。後ろを振り返って誰かが取り残されていないか、常に『気づくこと』を意識することが大切」と呼びかけた。

 2-3万に1人とされる希少疾患「先天性骨形成不全症」であることを公表している米良は「身障者と健常者の間だけの関係ではなく、困っている人に対して感性を研ぎ澄ませて向き合えば、相手が何を求めているかということをくんであげることができると思う。高齢者やお体の不自由な方に共感していくことはすごく大事ですし、自然と何かできることがあるのではないか」と自身の経験も踏まえて訴えかけた。

 フリーアナウンサーの小島奈津子は「米良さんがおっしゃったように、感性を研ぎ澄ませて相手の心の声を聞く意識を持つことが改めて大事だと感じました」と思いを重ねた。小島の胸元には「サポートマーク」。助ける側の意思表示マークだ。これで、サポートを必要とする側が助けを求めやすくなるという。声かけをためらいがちな社会において、双方向の具体的なシグナルとなる「目に見えるマーク」が必要とされている。

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