コンビニ大手のファミリーマートは9日、店長の業務をサポートする人型AI(人工知能)アシスタント「レイチェル」を、2023年度中に全国のファミマ店舗3割にあたる約5000店舗に導入すると発表した。
「レイチェル」は女性のAIで、人型のAI「バーチャルヒューマンエージェント」を提供するクーガー(東京都渋谷区)が開発。同社独自の音声認識技術やゲームAI技術、検索技術などを活用した。タブレット端末を通じて話しかけるだけで、画面を通じて各店舗の売上や客数などのデータを提供。商品の発注や売場づくりのポイントなどをアドバイスする。
店舗の省力化や運営力向上につなげる狙いで、店舗の運営を支援していたスーパーバイザー(SV=店舗巡回員)がこれまで行ってきた業務の一部を代替。SVの業務効率向上も図る。
店長業務をサポートする人型AIアシスタントの本格導入は、コンビニ初。ファミリーマート執行役員の中村弘之店舗業務企画本部長は「人手不足や市場の変化に対応していくため、店舗運営の効率化を高めていきたい。SVは個店の指導で、移動時間や資料をつくるのに長い時間を取られていた。SVの仕事の2~3割弱は削減できるんじゃないか」とした。
流通アナリストの渡辺広明氏は「AIアシスタントによる発注を中心とした店舗業務のサポートは効率的であると同時に、個人の能力に左右されないフラットなデータから発注に結びつけられるため、発注精度が上がり顧客が満足する品ぞろえの売場になっていきそう」と話す。
渡辺氏は、大手コンビニで2年半SV経験もあり「中食を中心とする発注指導に多くの時間を割いていたので、本来の経営指導まで時間的にできず忸怩たる思いをしていた。今回のAIアシスタント導入で、時間を割くべき仕事ができるようになるメリットがある。コンビニ本部にとっても効率化につながり、SVをよりクリエイティブな仕事に振り分けることが可能になる」と、自信の体験を振り返りながら分析する。
ファミマが持つ1万6541店舗の店舗網は、データの蓄積が進歩するほど価値が上がるAIの特性と相性が良いとして「コンビニのAIに集約した顧客データは国民のほとんどが利用している特性もあり、オールジャパンのマーケット分析にも活用できそう。コンビニのAIによる進化は、日本の小売や外食の未来を予感させ、ワクワクする取り組みになる」と期待した。