“デジタル陶芸”と呼ばれる陶芸作品がSNS上で注目されている。
きっかけになったのは
「可愛いの焼けた」
と自身の作品を紹介するデジタル陶芸家、増田敏也さんの投稿。
増田さんが紹介した作品はなんとカセットテープをモチーフにしたもの。しかも低解像度だった時代のCGのようにカクカクしたデザインで、従来の陶芸作品にはなかったような可愛さ、ポップさにあふれているのだ。陶芸に持つ固定観念を打ちくだかれる増田さんの作品に対し、SNSユーザー達からは
「心にささる!!欲しい…」
「知ってる陶芸となんか違う(固定概念崩してくるってすごいよね。(語彙力」
「モチーフになるものがあって、シルエットは大体そのまま、でも見た目は存在しないコンピューター上のピクセル、しかも作るのが大変な焼き物で実体があるっていうひねりの多さ。いい色・形・技術に触れたいとはちょっと違う、存在があやふやなものに触って実在を確認したくなるような魔力がある」
「超かわいい!!
陶芸の可能性を感じるなぁ〜!」
など数々の驚きの声、賞賛の声が上がっている。
増田さんにお話を聞いた。
中将タカノリ(以下「中将」):増田さんがデジタル陶芸をはじめられた時期やきっかけをお聞かせください
増田:高校の3年間、大学の4年間、大学スタッフ4年間の計11年間、金属工芸を学んでいました。スタッフ時くらいからCGをイメージした制作を開始したのですが「これを金属で作る必要性あるのか?」という考えが生まれ、スタッフの任期が終わり環境が変化することもあって2003年からいろんな素材で試行錯誤。「デジタルと真逆なイメージを持つ陶芸で制作するとより面白くなるのでは」とひらめき、現在のスタイルに行き着きました。
中将:今回、カセットテープを題材にされたきっかけをお聞かせください。
増田:陶芸というものは縄文土器を見てもわかるように1万年以上残る媒体であり、その当時の生活や文化などの記憶媒体という側面も持っているように考えています。
カセットテープは音源の記憶媒体という意味で陶芸と共通点がありますが、今や音源はデータで持ち運びする時代です。自分が慣れ親しんでいたカセットテープという媒体の存在は、後世まで残る素材で表現したいという想いからこの作品は生まれました。
カセットテープ自体を作るのはこれが初めてではありませんでした。今回作ったこのカセットテープは作品の一部で、完成品はラジカセとカセットテープのセットの作品になっています。
中将:CG風の陶芸を作る際のこだわりやご苦労されることなどお聞かせください
増田:出来るだけ陶芸らしい土味や手跡、物質感を出さないように成形しています。着色も、陶芸用の顔料で焼成しているのですが、なるだけ筆跡など出ないように気を付けています。
中将:これまでの作品への反響についてお聞かせください。
増田:初見の方は僕の作品を見てまず陶芸作品だとわからないのがほとんどです。説明しても皆さんの知ってる陶芸とはつながらないようで非常に驚かれます。
ただそれは、知らないうちに「陶芸とはこういうものだ」という刷り込みのような思い込みがあることに気付くきっかけになっていると思います。作品を通し、固定観念から抜け出し、世界の広がりを楽しんでいただけているのではないかとは思います。
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増田さんはTwitterなどSNS上でさまざまなデジタル陶芸作品を紹介している。
また現在、YOD Gallery(大阪市北区)で開催中のグループ展「“Reframing”」、またNew Taipei City Yingge Ceramics Museum(台湾・台北市)で開催されている「2022 Taiwan Ceramics Biennale」にも作品を出品中。ご興味ある方はぜひ足を運んでいただきたい。
増田敏也さん関連情報
Twitterアカウント:https://twitter.com/toshiyamasuda
“Reframing”(11月26日〜12月10日迄):https://www.yodgallery.com/copy-of-japan-exhibitions-13
2022 Taiwan Ceramics Biennale(2023年4月16日迄)