陸上自衛隊郡山駐屯地(福島県)に所属していた元女性自衛官・五ノ井里奈さん(23)が、複数の男性隊員から性被害を受けていた問題で、五ノ井さんが17日、都内で会見を開き、加害者の隊員4人から直接謝罪を受けたことを明かした。
2022年6月に陸上自衛隊を退職した五ノ井さんは、2020年9月からセクハラや性被害があったと訴え、YouTubeなどで実名で被害を告発。防衛省は9月29日、被害の事実を認定し、同省幹部が直接謝罪していた。
この日午前、非公開の場で4人から約1時間、謝罪を受けたという五ノ井さんは「1人ずつ個別で謝罪を受けました。加害者の人たちは私に対して『苦痛を与えていたこと、自分自身の言動により不快に思わせたことは間違いありません、申し訳ありませんでした』と話し、何度も頭を下げていた。土下座をして謝罪をしました」と話し、隊員4人のうち3人が土下座したことを明かした。
五ノ井さんは、隊員たちに「あなたたちはこの1年半、どんな顔をして、どんな思いで、どんな生活を過ごして、ここに来たのでしょうか?この責任をどう受け止め、どう責任を取ってくれるのですか」と聞いたという。4人は退職する意向で、自衛隊からの処分を受けた上で罪を償うとした。
4人はこれまで、性加害の事実を認めてこなかった。五ノ井さんは「なぜ最初のうちに証言をしてくれなかったのですか」と迫ったところ「家族にバレたくなかった」「各隊員をかばった」などとし、それぞれの判断だったという。
声を振り絞った五ノ井さんは「私だけが被害者じゃない。4人には家族がいる。お子さんや奥さん、みんなが帰りを信じて待っている。こういう行為をしてしまうのは、信じて待っている奥さんや子どもたちへの裏切り」と、厳しい言葉で断罪。4人から宛てられた「私の行為がいかに五ノ井さんを傷つけ、陸上自衛官として活躍したいという夢を、私の軽率な行動で壊してしまい大変申し訳ございません」などとした手紙を読み上げた。
五ノ井さんは「本来ならば、加害者4人が顔を出して、この場に立って欲しかった」と、会見同席を望んだが1人で会見。「家族もいる。私なりの配慮」と情けも見せた。直接対面する恐怖もあったとし、謝罪を受けながら涙が流れたという。
1年半に渡ったという「自分との闘い」を振り返り「直接謝罪を受けた時は『遅いな』と思いつつも、やっとこの日が来たという思いでした。私の傷は一生の傷。謝ったから許すという話じゃないんですけど、これを区切りとしてやってきた。起訴になるのか示談になるのかわからないですけど、正直に話して罪を償うと約束してくれた」と話した。
五ノ井さんは最後に「この件で、自分らしさを失った。私の生きる姿を同じように苦しんでいる人に見てもらって、少しでも勇気や元気、生きる希望を感じさせるような活動をしたい。被害に遭ったから静かに暮らさなきゃいけない…というのではなく、被害者じゃなくひとりの人間として自分らしく強く生きたい」と前を向いた。