絶版マンガを書籍化「コミックパーク」サービス終了 駆け込み需要で月間売上は25倍「ジレンマ感じる」

山本 鋼平 山本 鋼平
コミックパークで製本されるペーパーバッグ
コミックパークで製本されるペーパーバッグ

 入手困難なマンガ作品を個人の注文で書籍化する「コミックパーク」は9月20日、2002年から続いたサービスを終了した。駆け込み需要を受け、9月の月間売上は通常の約25倍、過去最高級に膨らんだという。同サービスを立ち上げ、運営してきたコンテンツワークス社の荻野明彦氏は「オンデマンドサービスの宿命ですが、いつでも買える状況だと売れない。もうなくなると分かると、限定性が生まれて売れる。ジレンマを感じました」と語った。

 同サービスは〝さらば絶版!コミックスを一冊からでもつくってお届け〟をキャッチコピーに、古書店で高価で売買される絶版作品、単行本になっていない作品を書籍化。コミックパークのウェブサイトで受注した作品を、コンビニ本のようなペーパーバックに製本し、送付する。販売価格は送料別で1冊800円から1000円程。市販の単行本より割高だが、古書店で高額で取引される作品や、絶版作品、単行本化されていない作品を、1冊単位で書籍化するオンデマンド出版は画期的だった。

 2007年頃が全盛期だった。「サイクル野郎」(作・庄司としお、1971~79年「少年キング」連載)、未収録話を残して単行本6巻までが発売されていた「新聖モテモテ王国」(作・ながいけん、1996~2000年「少年サンデー」連載)は第7巻を新たにオンデマンド出版し、ヒットした。

 ところが、ヒット作品は版元から電子書籍化、新装版が出されるなどして、値段が割高なペーパーバッグ版は逆風を受けた。電子書籍の普及も重なり、売上高は全盛期の5パーセント以下に低迷。サービス終了を余儀なくされた。

 新装版や電子書籍になっていない約700作品が、再び入手困難な絶版状態に戻り、駆け込み需要では人気を集めた。「アパッチ野球軍」(作・花登筺、画・梅本さちお、1970~72年「少年キング」連載)、杉浦茂、ちばてつやの昭和中期までの作品、数量限定発売だった4枚組DVD-ROM「赤塚不二夫漫画大全集」のペーパーバック版、「ファミコンロッキー」(あさいもとゆき)、「GO!GO! ミニ四ファイター」(おちよしひこ)などのコロコロコミック作品が注目された。全271巻で総額30万円超の「赤塚不二夫漫画大全集」は数セットが売れた。この約700作品のうち、数タイトルは版元から電子書籍化の動きがあるが、大半は入手困難となり、古本市場での価値上昇が予想される。同サービスのキャッチコピーとは正反対な現実が残った。

 荻野氏は「権利の関係でできませんでしたが、表紙を発表当時と同じものにできれば、コンテンツとしての価値が上がったと思います。電子版もできれば良かったかもしれません。タイトルを発表してクラウドファンディングのように資金を集めてから出版できれば、違ったかもしれません」と振り返った。その上で「今売れているマンガを扱っていませんし、そもそも売れないから絶版になったのであって、売れないマンガをいくら集めてもビジネスとしては厳しい。趣味とビジネスは違いますね」と語った。

 それでも、この20年間の取り組みには達成感も残る。「版元から権利を得て、1冊から本の形にしてファンに届ける仕組みをつくり、当時のものとは違っても表紙に統一感を持たせるなど、同じサービスを今から立ち上げようとしても不可能だと思います。出版社側の事情と、我々の情熱と、さまざまなタイミングが重なって生まれたサービスでした」と胸を張った。通常なら注文から2~3日で発送するが、駆け込み需要を受け、発送は10月中旬までかかるという。最後に荻野氏は「20年間続けられたのは、ファンの支えがあったからです。ありがとうございました」と、感謝を口にした。

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