2020年に61歳で死去した漫画家・まつもと泉さんのデビュー40周年フェアが、電子書籍販売サイトebookjapanで9月5日まで開催されている。集英社「週刊少年ジャンプ」で連載され、アニメ化された代表作「きまぐれオレンジ☆ロード」が、「せさみ★すとりーと」とともに20%の割引価格で販売中。「きまぐれオレンジ☆ロード」の全20巻セット購入者には、同サイト限定、67ページに及ぶ「きまぐれオレンジ☆ロード ネーム集」がプレゼントされる。
吹き出しやスケッチが描かれた〝漫画の設計図〟ネーム集のプレゼントは異例。2010年、同サイトでの販売開始時からの特典で、当時の担当者は「まつもと先生の作品の電子書籍化は当サイトが2番目でした。電子書籍はまだマイナーで、後発として差別化を図ろうと考えました」と説明した。まつもとさんの自宅でネームを見る機会があり、企画を提案。「ラフで大ざっぱなネームもありますが、先生のネームはとても見応えがあると思いました。完成した作品が全て、と考える方も多い中、先生は『読者が喜んでくれて、珍しがってくれるなら』と快諾してくれました。読者から、貴重なものが見られてうれしい、といったレビューが届き、先生も喜んでいました」と振り返った。
同作は1984年から87年まで連載され、87年から翌年までテレビアニメが放送。超能力を持つ少年・春日恭介、不良少女・鮎川まどか、まどかの後輩・檜山ひかるの奇妙な三角関係を描いたラブコメの名作。海外での人気が高いことでも知られている。
単行本20巻の各表紙が同サイトのオリジナル版であることも差別化の一環。別の担当者は「先生がジャンプ連載時の扉絵を探して、表紙に使うイラストを指定しました。闘病が続き体調の良くない先生が、快く協力してくれました」と回想した。電子書籍の配信後、若手漫画家と一緒に会食する機会があったそうで「ジャンプ連載時の思い出をとても楽しそうに話してくれました」と懐かしんだ。
ネームは人物の描き分けはもちろん、表情や体のラインまでもが、選ばれた線で表現されている。息遣いが聞こえるようなネーム、まつもと泉さんのデビュー40周年の節目、思い入れの強い作品。紙の書籍の増刷等に比べて、電子書籍をプッシュするハードルははるかに低い。最初の担当者は「先生の絵はとても若々しいので、若者や新しいユーザーにもきっと届く。先生の作品をもっと多くの方に知っていただきたい」と、決意を新たにしていた。