年間約3万6000人もの患者数が報告されている病気、くも膜下出血(厚生労働省 / 平成23年調べ)。命を落としかねないこの病気を患い、その壮絶な体験をリアルに描いたエッセイ漫画『くも膜下出血のラブレター』が話題となっている。
作者は、イラストレーターと漫画家として活躍している、新月ゆきさん(@Shingetsu_yuki)。自身が経験したくも膜下出血から回復する物語を通して、理想の最期や生きる上での目標を明確にしていくこの作品は読者に大きな反響を呼び、同じ病気を経験した読者の心の支えとなっている。
そこで今回は、新月さんにメールでインタビューを行い、これまでの歩みや『くも膜下出血のラブレター』に関する創作秘話、そして、今後の展開についても話を聞いた。
◆倒れた瞬間に、描きたいと思った衝動
幼少期から漫画や小説を読むことが好きだったという新月さん。創作を始めるきっかけは、中学生の時に出会った小説に感動し「こんなふうに人を感動させられる何かを創りたい」と思ったことが理由だと話す。
「以前は、経理事務に従事しながら、データ集計などのツール制作を得意としていました。でも、今後の人生を振り返ったときに、『経理は慣れてはいるけれど、やはり絵や漫画を描きたい!』と思って、イラストレーターと漫画家になろうと思い、学校には通いはじめたんです」
子どもの頃からの夢を実現するために、創作活動にのめり込んでいく新月さん。そんなある日、これまでに経験したことがないような頭痛を感じ、病院へ。くも膜下出血と診断され、想定していなかった出来事に次々と遭遇していく。命の危機を感じたこの経験を、なぜ漫画という形で残そうと考えたのか。新月さんは言う。
「倒れた時から描くことは、私の中で決まっていました。手術後、私が医師に最初にした質問は、自分の体験談“くも膜下出血”を漫画にして良いかどうか?という確認でした」。“人を感動させられる何かを創りたい”という強い思いが、こうした作品として結実したのかもしれない。
◆「自分は自分のままでいい」という作品を
この『くも膜下出血のラブレター』は大きく注目され、Web漫画として連載化。当面の目標は、この作品を最後まで描き終え、より多くの人に届けていくこと。そして、こうした経験を経て、新月さんはこれまで歩みを改めて振り返り、新たな視点の作品を世に出したいと考えていると教えてくれた。
「私自身、生きづらさを抱えて、生きてきました。そして、私のことは、ある程度、答えを持つことができました。しかし、ふと周囲を見ると、発達障害の女性たちや家族から虐待にあった子どもたちがいます。私は彼らと関わっていて思うのが、“自分は自分のままで良い”ということ。そうした自分を心から受け入れることができるような物語を描きたいと思っています。 “生きること、笑うこと、自立すること”を作品にしていきたいですね」。くも膜下出血から生還し、新たな作品のテーマに出会った新月さんが、次に生み出す作品にも注目していきたい。
■■新月ゆきさん情報
▶Twitter /
https://onl.la/J9DAkc5
▶新月ゆきさんホームページ
https://yuki-telework.com
▶『くも膜下出血のラブレター』連載(コミチ)
https://comici.jp/Shingetsu_yuki/series/5621824df84a5