「アベンジャーズ」の改革!『ソー:ラブ&サンダー』はジェンダーバランス&子どもたちも楽しめる

伊藤 さとり 伊藤 さとり
「ソー:ラブ&サンダー」のワンシーン=(C)©Marvel Studios 2022
「ソー:ラブ&サンダー」のワンシーン=(C)©Marvel Studios 2022

 ◆原点回帰でありウーマンパワーを描くアベンジャーズヒーロー

 アベンジャーズメンバーの中でも人気を誇る陽気なマッチョキャラ、ソー。彼を演じるクリス・ヘムズワースも自身のインスタグラムに肉体改造の為のトレーニング動画をあげたり、妻や子どもとの日常をアップするなど子煩悩ぶりも披露しています。

 そんなクリヘムと『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年)に続き、今作『ソー:ラブ&サンダー』でタッグを組むのは、『ジョジョ・ラビット』(19年)がアカデミー賞に6部門ノミネートされ、脚本賞を受賞したタイカ・ワイティティ。ちなみにソーの生活をドキュメンタリータッチで描いた短編『チーム・ソー』(16年)も監督しているなどクリヘムとはすでに信頼関係が築かれている仲。

 とにかくユーモアのセンスは抜群、躍動感ある画作りも上手く、お洒落番長でも知られるワイティティは、『スター・ウォーズ』のTVシリーズ「マンダロリアン」シーズン1(19年)の8話を担当したり、ライアン・レイノルズ主演『フリー・ガイ』でゲーム会社の社長役を務めるなど俳優業も好調。実は今作でもその演技を堪能することができ、「バトルロイヤル」に続き、全身が岩でできた戦士でソーの相棒ローグ役で災難に遭いながらも笑いを取っているのです。

 さて、最新作『ソー:ラブ&サンダー』は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19年)後、ソーがローグと共にガーディアンズと共に戦っているシーンから始まります。しかもシリーズ第1作『マイティ・ソー』(11年)で恋に落ちた天文学者のジェーンがもう一人のマイティ・ソーになるという女性ヒーローの誕生を描いたものであり、更に前作で共に戦った女戦士ヴァルキリーが新アスガルドの王を任され、彼女がレズビアンであることが分かるシーンがさりげなく導入されるなど、かなりジェンダーバランスを意識した設定に。

 そんな彼女達の力も借りて悪と戦うソーにマッチするナンバーはガンズ・アンド・ローゼズ。劇中では「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」や「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」、「パラダイス・シティ」「ノーヴェンバー・レイン」といったガンズ・アンド・ローゼズの名曲を散りばめながら、エンヤ、アバ他、バラエティに富んだ音楽でソーの世界観をご機嫌に奏でていきます。しかものソーの親友ヘイムダルの息子が、“これからはアクセルと呼んで欲しい”というエピソードは、ガンズ・アンド・ローゼズのヴォーカル、アクセル・ローズの影響によるものというのも心ニクイのです。

  そして本作のもう一つの魅力となっているのが、“子どもと楽しめるヒーローもの”だということ。今までの『マイティ・ソー』シリーズにはなかった沢山の子どもたちが登場し、後半にはソーと共に戦うシーンまで映し出されます。それは、映画ならではの“大きくなったらヒーローになりたい”という子どもの思いを汲んだ演出であり、そもそもヒーロー映画とは、子どもに勇気を与え、正義を学ぶものだと唱えているようでした。

 しかもワイティティには娘が2人おり、クリヘムは娘と双子の息子の父親。もしかしたら二人で子どもが楽しめるヒーロー映画を作ることを念頭に置いて制作したのかもしれませんね。映画を観るとそう感じずにはいられないはず。

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