幻の特撮映画「アニメちゃん」都内で上映!円谷プロ製作の埋もれたレア作を発掘、片桐はいりもゲスト参加

北村 泰介 北村 泰介
公園で立ち話をする(左から)ブースカ、カネゴン、ピグモンの「愉快獣」トリオ(C)円谷プロ
公園で立ち話をする(左から)ブースカ、カネゴン、ピグモンの「愉快獣」トリオ(C)円谷プロ

 幻の特撮映画「アニメちゃん」という作品をご存じだろうか。円谷プロダクション製作で1984年に公開され、子どもに人気のブースカ、カネゴン、ピグモンというユーモラスな怪獣トリオが主演する実写作品だ。めったに見られない「激レア作」だったが、7月に都内で開催されるイベントで特別上映されることになった。特撮マニア待望の企画について、主催者から話を聞いた。

 同作は、12歳という設定の少女「アニメちゃん」によって壁に描かれたブースカ、カネゴン、ピグモンが実体化し、活劇を展開する上映時間47分の中編映画だ。

 ブースカは66-67年に日本テレビ系で放送された実写ドラマ「快獣ブースカ」(全47話)で主役を張った人気者。イグアナが変異したという設定だが、ずんぐりした愛くるしい姿が親しまれている。カネゴンは66年に放送された「ウルトラQ」第15話に登場。お金が好きな少年・加根田金男が変異した怪獣で、紙幣や硬貨を主食とする(ちなみに、先日亡くなった野村昭子さんが金男の母親役)。ピグモンは特撮ドラマの金字塔「ウルトラマン」(TBS系、66-67年放送)の第8話と第37話に登場する小型怪獣で、人間に友好的なマスコット的存在だ。

 リアルタイムで接した子どもたちの多くは還暦を迎えているが、再放送や映像ソフトなどを通して幅広い世代に知られている。

 しかし、「アニメちゃん」という作品自体は半ば〝封印〟された状態にあった。84年公開の「ウルトラマン物語」と同時上映されたまま、その後は見られる機会がほとんどなかった。近年では、2017年10月に京都みなみ会館で開催されたイベントで上映され、CS放送では18年3月にテレ朝チャンネル2で「幻の円谷プロ作品特集」の1本として1度だけ放送されたが、DVDにはなっておらず、現時点で配信の予定もない。

 そうした状況の中、円谷プロに思いを伝えて交渉し、上映を実現したのが福島県本宮市で1914年に建てられた「本宮映画劇場」の2代目館主・田村修司さんの三女・田村優子さんだった。昨年7月、優子さんは初の著書「場末のシネマパラダイス 本宮映画劇場」(筑摩書房)の出版記念イベントを都内の劇場「ザムザ阿佐谷」で開催。今年は108周年記念の「本宮映画劇場まつり」を7月9日と10日の両日(昼夜計4回)、同所で行ない、全回で「アニメちゃん」を上映する。

 その経緯や企画意図について、優子さんはよろず~ニュースの取材に対して思いを語った。

 「本宮映画劇場では、子ども向け映画の上映にも熱心に取り組んでいたことを知ってほしかったのです。『スーパージャイアンツ』『まぼろし探偵』『ハンマー・キット』『赤胴鈴之助』などの資料が残されています。そこで『夏休みに行った映画館』を再現したいと。本宮市から近い(福島県)須賀川市出身の円谷英二が設立した円谷プロの劇場作品の中でも、極めて上映の機会の少ないファンタジー特撮映画『アニメちゃん』は自分が見たい映画の1本で、ずっと気になっていました。誰も上映しないなら、自分がやるしかないかなと思いました。実際に当時見たという方がほとんど周りにいないので、埋もれた映画の発掘でもあるのかなと思うし、今見ると新鮮に感じるのではないかと思います」

 作品の見どころについて、優子さんは「(大映の)ガメラシリーズでおなじみの湯浅憲明監督の作品。かわいいブースカ、カネゴン、ピグモンの共演というだけでワクワクします。出演者も(ヒデとロザンナの)出門英、(『アタックNO.1』などのアニメソング歌手)大杉久美子、(喜劇俳優の)坊屋三郎、左とん平など豪華です。1984年の時代背景も楽しめると思います」と解説した。また、「ウルトラマン」で科学特捜隊のイデ隊員を演じた二瓶正也さんらウルトラシリーズゆかりの俳優が意外な役で登場するという。

 イベントでは、9日昼の部に俳優の片桐はいりがトークゲストとして出演。多忙な芸能活動の傍ら、実際に都内の映画館で受付係をしている片桐を主人公にした短編連作ムービー「もぎりさん」全12話を一挙上映する(「アニメちゃん」と共に全回上映)。同日夜の部は書籍編集者・青木真次氏と無料情報誌「名画座かんぺ」発行人・のむみち氏、10日昼の部では映写技術者・荒島晃宏氏と国立映画アーカイブ主任研究員の岡田秀則氏が対談。同日夜の部は昭和歌謡に関する執筆活動やラジオパーソナリティーなど多才ぶりを発揮している歌手・芸人のタブレット純がゲスト出演する。いずれも司会は活弁士の山田広野が務める。

 多彩な出演者と一緒に「アニメちゃん」を見ることについて、優子さんは「ほとんどの方が見たことない映画だと思うので、『初めて』をみんなで共有できるのが楽しみです。そして、映画ファンのみならず、東京などで暮らす福島県出身者にも本宮映画劇場を知っていただけたら」と期待を込めた。

 同イベントの予約、問い合わせはmotomiyaeigeki1914@gmail.com

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