LGBTQ+の声、職場や仕事探しでの違和感とは 「弱者である前提で話」「中身より外見で見られる」

北村 泰介 北村 泰介
ライフマガジン「BE」の編集スタッフであるサリー楓さん。トランスジェンダー当事者としてLGBTQ+に関する講演を行い、映画にも出演した
ライフマガジン「BE」の編集スタッフであるサリー楓さん。トランスジェンダー当事者としてLGBTQ+に関する講演を行い、映画にも出演した

 性的少数者とされる「LGBTQ+」の人たちは職場や仕事探しにおいて、どのような思いを抱いているのだろうか。6月に創刊予定のライフマガジン「BE」の編集スタッフでもある2人の当事者が、よろず~ニュースの取材に対して思いを吐露した。

 求人検索エンジン「インディード」の日本法人である「インディード ジャパン」では毎年6月に世界各地で LGBTQ+の権利について啓発を促すイベントが開催される「プライド月間」に向けたプロジェクトを開始。その準備期間に、LGBTQ+の人たちの思いや意見、違和感などの声が「BE」に集約されている。

 サリー楓さんは1993年、京都生まれ。大学在学中にカミングアウト。建築設計事務所「日建設計」を拠点に建築や事業の提案を行う傍ら、トランスジェンダー当事者としてLGBTQ+に関する講演を行う。自身が女性として踏み出した瞬間を追ったドキュメンタリー映画『息子のままで、女子になる』が 2021年に公開された。

 サリーさんは「ほんの一例ですが、職場で男性らしさ、女性らしさが求められるように、カミングアウトしたことによってLGBTらしさが求められてしまう場面があります。例えば、私がいわゆる地味なOLファッションをすると『意外と(女子社員に)なじんでいるね』と言われたり、少しおしゃれをしていると『ニューハーフは美人な方が多いというけれど、やはり楓さんも美意識が高い』と言われたり。サービスに対してアイデアを出す際も『困ることってたくさんあると思いますが、そういうマイノリティ的な視点で何か意見はありますか?』と、弱者である前提で話が進むこともあります」と証言した。

 さらに、サリーさんは「マイノリティ性を活(い)かした真実味のある意見をすること自体は悪くないと思いますから、LGBTらしさが求められることが常に悪いとは思いませんが、『今この瞬間を快適にやり過ごすこと』よりも『未来を創(つく)るためにジャンプする、そのために今この瞬間は譲歩して助走をつけること』を選ばざるを得ない。そういった過渡期に耐えているんだという感覚があります」と実感を込めた。

 ゲイであることを公表したユーチューバーの「かずえちゃん」は82年、福井県生まれ。保険会社勤務などを経て、30歳でカナダに留学し、帰国後の16 年にYouTubeをスタート。「LGBTQ って身近にいるよ」「あなたは1 人じゃないよ」と伝えるため、動画配信や講演、執筆活動、オンラインサロン「かず部屋」を運営し、ダイバーシティ推進に力を入れる三洋化成工業株式会社に入社した。

 かずえちゃんは「とあるLGBTQ+専用の転職エージェントを利用したことがあります。サイトをみていると『LGBTQ+への理解のある会社です』という紹介がされている会社が多くあるのですが、管理職の方がLGBTQ+についての研修を修了していても、実際に一緒に働く人たちはどの程度、理解があるのかが分からず、結局、応募するのをためらうことが多かったです。今働いている会社も、管理職のポジションの方々はLGBTQについての研修など受けている方もおられますが、実際に一緒に働いているチームの人たちはあまり理解があるとは言い難く、どの程度理解がある職場なのか、求人をみていても分からない…ということがあると思います」と不安を明かした。さらに「教師をやっている友人は『カミングアウトしたら仕事ができなくなる怖さがあり、それができない』と言っています。当事者が変わるのではなく、社会が変わっていくことの大切さを感じます」と訴えた。

 この2人に加え、創刊編集スタッフには、レズビアンを公表した元バレーボール選手の滝沢ななえさん、ゲイであることをオープンにして記事や著書を世に出してきた松岡宗嗣さんがいる。同プロジェクトでは、LGBTQ+の人たちの声を「BE Voice」として5月31日まで募集中。特設サイトの応募フォームから投稿できる。現時点で寄せられた声を紹介しよう。

 「職場の同僚や上司からの『彼女いるの?結婚するでしょ?』という質問はかなりきつい。プライベートの話をする上では質問しやすい内容かもしれないが、マイノリティにとっては返しに困るし苦痛」「セクシャルマイノリティである前に女性の身体を持っている。社内でD&I(多様性を受け入れること)の話になった際も『LGBTQの人』として扱われ、結婚・子育て・介護の悩みはないかのように話されてしまう。ビジネスパーソンにも、もっと基本的な社会学やジェンダー論の知識を常識として身に付けてほしい」「仕事や仕事探しにおいて、思ったよりもずっと人間は性別を最初に見て、それから外見を見て、最後に個人の中身を見るということに驚いた」

 今は過渡期。「自分の性のあり方が理由で職場の人間関係に悩む人たち」の模索は続く。それは他人ごとではない。

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【「Indeed Rainbow Voice 2022』特設サイトURL】
https://jp.indeed.com/cm/be-magazine
(「BE Voice」の受付は 5 月31 日23時59分 まで)

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