コスプレ感覚の「韓流制服」が人気 タイトなスタイルに「違い」日本の制服に影響? 研究者が解説

北村 泰介 北村 泰介
体のラインに沿ったスタイルが特徴の「韓国系」制服。コスプレ感覚で楽しむ日本の韓流愛好家の間で人気が高まっているという
体のラインに沿ったスタイルが特徴の「韓国系」制服。コスプレ感覚で楽しむ日本の韓流愛好家の間で人気が高まっているという

 近年、韓国のドラマやK-POPを愛好するZ世代の女性の間で「韓流スタイル制服」が人気だという。タイトスカートなど体のラインに沿ったタイプが特徴だが、日本の学校でそのスタイルが採用されている現状や、今後、日本での愛好家に向けてアレンジした新たな取り組みはあるのか。韓流制服に関心を持ち、調査してきた制服研究の第一人者でイラストレーターの森伸之氏に見解を聞いた。

 「女子高校生制服トレンド白書2020」(制服ブランド「Cupop School」の調査)によると、女子高校生(20年当時)833人に「清楚系」「韓国系」「ギャル系」の着こなしのうち、どのスタイルを着たいかとアンケートしたところ、67%を占めた「清楚系」に続いて、ニュースタイルの「韓国系」が19%と次点になり、以前から定着している「ギャル系」の14%を上回った。

 実際に学校の制服として導入されていなくても、プライベートでコスプレ的に着用する韓流愛好者に向け、韓国風制服の通販サイトやレンタルショップが登場している。この状況は、K-POPアイドルや韓国の高校が舞台となるウェブ配信ドラマなどに出てくる制服への憧れが起因していると指摘されている。

 こうした背景を受け、森氏は、よろず~ニュースの取材に対して、韓流制服の現状や今後の可能性について解説した。

 初の著書『東京女子高制服図鑑』(弓立社)が1985年にベストセラーとなり、94年度まで毎年改訂版を出して日本の制服文化に大きな足跡を残した森氏。現在も『女子校制服手帖』『平成女子高制服クロニクル』(ともに河出書房新社)が発売中で、小学館「週刊ポスト」では近代建築のイラストルポ『ふらっと歴史建物探訪』連載中だ。制服研究の第一人者は韓流制服をどのように見るのか。

 -まずは韓国の学校制服とは。

 「いわゆる『韓流制服』の特徴としては、タイトで短めなスカート(ノープリーツかボックスプリーツ)というものがあります。またブレザーの丈も短めで、タイトなシルエットが主流のようです」

 -韓流制服を導入している学校は日本にありますか?また、90年代半ば頃の〝コギャル〟がスカート丈を短く詰めたように、日本の学校制服を韓流風に着こなす動きは?

 「現在のところ、制服としてこのようなデザインを新たに採用する学校はほとんどありません。学校制服のデザインは依然として、車ひだのスカートが主流で、これをひざ丈か、ひざ上丈で履く着こなしが定着しています。慶應義塾女子高校ではノープリーツでタイトぎみのスカートを採用していますが、こちらは韓流とは無関係にずっと以前から指定されているものです。もし生徒がタイトなシルエットの制服を着たいと思っても、学校指定の制服がそういうデザインでない場合は諦めるしかありません。スカート丈を詰めるのとは違い、シルエットから改造するのは難しいので」

 -韓流制服の日本での実状と今後の可能性は。

 「生徒たちは通学用の制服として、韓流制服的なデザインを着たいのかどうか。いわゆる『自由制服』(規則の緩い学校や私服通学の学校の生徒が自分で買う制服風ファッション)のメーカーの方にこの辺の事情をうかがったところ、『中高生本人の中では憧れが非常に高いように感じていますが、実際の部分では韓国風制服コーデを着用している方は非常に少なく感じます』とのこと。こちらのメーカーの商品ラインナップには、韓流制服が話題になる前からタイトなシルエットのブレザーやスカートが用意されているものの、近年になってそれらの人気が上がった印象はないとのことでした。一方で、韓流制服のレンタルショップは増えています。通学用ではなく、仲間うちで楽しむ軽いコスプレ感覚で利用しているようです。現状としてはこんな感じですが、タイトなデザインの制服も日本の女子中高生がコスプレを楽しむほどには魅力的なので、他校との差別化を狙って採用する学校が出てくる可能性が今後もないとは言えません」

 実は、森氏も取り組む具体的な動きがある。

 同氏は「現在、学校制服メーカー『瀧本株式会社』とのコラボレーションにより、森伸之オリジナルデザインの学校制服を提案しています。いくつかのデザインのひとつとして、韓流制服をイメージしたタイトなシルエットの制服も作製しました。もし実際に採用されれば、やや画一的に思える現在の学校制服のなかで『違い』を出せるデザインとして人気になるかも…と期待しています」と明かす。

 少子化社会の中、こうした識者のアイディアを生かした新たな動きが、韓流も含む、生徒にとって魅力ある制服の多様化を進めていく可能性を秘めている。今後、さらに注目を集めそうだ。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース