5月に入り、そろそろ梅雨対策が必要な季節ですね。ここ数年、ゲリラ豪雨や水害のニュースをよく見聞きします。そこで今回は、自宅の敷地にお隣から雨水が流れ込んできたときの対応についてお話しします。
豪雨が続くと雨水が自宅の敷地に流れ込み、水浸しになる心配もあります。たとえば住宅街が傾斜地になっており、自分の敷地に、お隣(傾斜の上側に位置する家)の庭から雨水が流れ込んできたとします。防ぐために盛り土をして雨水をせき止めることが考えられますが、これは法的に許される行為でしょうか。
この問題、なんらの疑問も持たずに「もちろんだ」とお答えになる方もおられるかもしれません。しかし、民法では「土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない」(民法第214条)と定めています。
つまり、問題のケースでは、盛り土をしてはならないのです。というのも、もし、仮に自然に傾斜の上側から流れてくる雨水を人工的にせき止めてしまうと水の滞留が起こり、かえってその周辺の土地全体が土砂崩れを起こしてしまう危険性があるからなのです。ですので、傾斜地では上側から雨水等の自然水が流れ込んできたとしても盛り土や、水の流れを変更する工事等をして、せき止めることはできません。
もっとも民法は、隣地から水が「自然に」流れて来るのを妨げてはならないとしているだけですから、「人工的に」流れてくる水をせき止めることは許されます。
たとえば傾斜の上側に位置するお隣さんが「雨どい」を設置しているがために、直接、自分の敷地に雨水が流れ込んでくるケースはどうでしょうか。これについても民法に定めがあり、「土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない」(民法第218条)としています。つまり、雨水がわざわざ隣地に注がれるような工作物の設置は禁止されているので、こちらのケースでは、お隣さんに雨どいの設置方法の改善を求めることが可能です。
ただし、その場合でも法律の世界では「受忍限度」という考え方を用います。すなわち、雨どいを伝って流れ込んでくる雨水が常識的に許容される範囲なのであれば、文句は言えないというわけです。