正義のヒーロー×悪の女戦闘員ラブコメ アニメ化で原作者の並外れた協力姿勢「恋は世界征服のあとで」

山本 鋼平 山本 鋼平

 4月8日にスタートしたテレビアニメ「恋は世界征服のあとで」(金曜夜、TOKYO MX、BS朝日ほか)は、正義のヒーロー戦隊「ジェラート5」のリーダー・レッドジェラートこと相川不動と、悪の秘密結社「ゲッコー」の最強戦闘員・死神王女こと禍原デス美が、秘密の禁断交際を進める戦隊ラブコメディー。原作漫画を「月刊少年マガジン」(講談社)に連載中の野田宏氏(原作)と若松卓宏氏(漫画)は、担当編集者の小田太郎氏が驚くほど、アニメ制作に協力的だったという。

 ひたすら真っすぐな不動と、どこまでもかわいいデス美の交際を、個性豊かな戦隊メンバーと悪の王女たちが彩るラブコメ。不動役の小林裕介やデス美役の長谷川育美をはじめとする豪華声優陣、オーイシマサヨシと田村ゆかりがデュエットするオープニング主題歌、アクション満載の作画など、話題となる要素は多い。野田氏は「感動しかありませんし、もう衝撃ですね」と出来上がりに大満足の様子。若松氏は「ただただ楽しめる作品だと自信を持って言えます」と胸を張り、小田氏は「まだ確定ではない、と前置きがあった話が軒並み実現していきました」と声を弾ませた。

 原作側がこれほどアニメに肩入れするのも無理はない。原作者という肩書以上に力を貸してきた。小田氏は「どれ程アニメに関わるかは作家によってそれぞれです。ポイントポイントで監修する方、ノータッチの方もいますが、特に若松先生は一から十まで協力して、アニメ制作側が助かったと喜ぶほどでした」と目を丸くした。

 原作は2019年10月に連載開始。最初のアニメ化への提案は単行本1巻が発売されていた20年春頃だった。翌年にアニメ化が具体化した頃、単行本発売はまだ2巻の段階。1クールの放送分には原作が足らず、アニメのシナリオ会議に向けて野田氏はネーム(漫画の設計図)を前倒しで作成、要望に応えて「ジェラート5」と「ゲッコー」が派手なバトルを展開する回も実現させた。

 若松氏は戦隊コスチュームなど細かい設定資料を提供した。小田氏は「アニメ側から変身やバトルシーンで使う設定資料はありますか、と尋ねられて、ラブコメには使わないので考えていないと思うんですけど…と伝えていましたが、若松先生からは『ありますよ』と。変身シーンはおろか、おのおのの武器から、その武器がどう変形するのか、ヘルメットがどう開閉するかまで全部あってビックリしました」と回想。若松氏は「仮面ライダークウガ」(2000年)から特撮ヒーローに夢中になり、戦隊ものを含めて各作品の設定資料集を見ては、想像を膨らませてきたという。初めて戦隊ヒーローを描く今作で、その情熱の表れがアニメに活用された。その後もアニメの進ちょくに応じて協力してきたという。

 戦隊ヒーローと悪の組織の恋愛設定が目を引く同作。野田氏は「最初はOLで片思いしているデス美さんの日常というものでしたけど…」と振り返り、「ロミオとジュリエットのように、バレちゃいけない、立場が異なる者同士の恋愛を描いてみたかった。秘密の交際の舞台をどうしようか、となった時に、若松先生は特撮が好きだから力を借りよう、と考えました」と、自身は詳しくないにも関わらず、ラブコメに緊張感を持たせる異色の設定ができた。その後、若松氏に死神王女の他に5人の王女案を依頼したところ、各20分程でデザインが寄せられ、そのまま採用された。死神王女のコスチューム案では「コスプレイヤーが楽しめるように」と、小田氏が布をはがし絶妙の露出度を成立させた。若松氏と特撮の相性の良さは、見立て通りだった。

 連載3年目。野田氏は、序盤でデス美とピンクジェラートが対峙する回が転機だと振り返る。「コメディだけではなくけっこうエモい話もやれるんじゃないか、という手応えがありましたね」。デス美の父親ら家族が登場し、人物像を掘り下げるなど、物語の幅が広がった。若松氏は、合体ロボはふくらはぎの部分が不要という会話がネームに描かれた回を挙げた。「野田先生は詳しくないはずなのに、合体ロボのふくらはぎは必要ないという〝痛いところを突くネタ〟があって面白かったですね」と笑った。キャラクターでは当初は戦闘狂だった魔獣王女の変化が大きく、野田氏は「こんなに出番が増えるとは思っていませんでした。一番真人間なので便利ですね。最初は、若松先生のデザイン通り魔獣王女がやんちゃで、鋼鉄王女がしっかり者でしたが、逆の方が面白いのかなと思い、だんだん鋼鉄王女がヤバい女になり、魔獣がまともになりました」と、楽しそうに話した。

 小田氏が「これほど楽しい現場はレアケース」と語るほど、野田氏と若松氏が和気あいあいとアイデアを出し合う。原作では大阪・USJを模した設定だった遊園地回では、アニメ側から「タイアップしたいので設定をよみうりランドに変更したい」と打診され、快諾した。原作漫画の二人のように、アニメ側とも明るく楽しい関係を築いている。

 野田氏は「とても平和な作品です。キュンキュンしてもらえる自信はあるので、より多くの人に見ていただきたい。ネームをつくる時、デス美さん以外はキャラになりきりますが、デス美さんは、こんな女の子いたらいいなという第三者的な目線で描いています。アニメならではのデス美さんも楽しんでいただければ」と呼び掛けた。若松氏は「自分の描いた小さな所までよく見て作ってもらえて感動しています。このうれしい気持ちが、アニメを見た人にも伝わればいいなあと思います」と、明るい感情の共有を願っていた。

 ◆電子特装版に若松氏の設定集&「マガポケ」で作品無料配信 アニメで活用された若松氏の設定集は、単行本の最新5巻の電子限定特装版に18ページ収録。また、テレビアニメ放送を記念して、講談社のマンガアプリ「マガポケ」では最新話を除く全話を無料(チケット対象話含む)で4月25日まで公開中。

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