Appleのシンプルなパッケージは「アフガニスタンの砂漠」から デザイナーが明かす制作秘話

グラフィックデザイナーの松井桂三氏
グラフィックデザイナーの松井桂三氏

 米Apple社Macのパッケージなどさまざまな企業のアートディレクションを手がけたグラフィックデザイナーの松井桂三氏(75)の個展「松井桂三展 化学反応実験」が14日、兵庫県・宝塚市立文化芸術センターで開幕した(5月14日まで)。同日、内覧会に出席した松井氏は「Appleのパッケージ構築を頼まれた時に思い描いたのはアフガニスタンなんです」と制作秘話を語った。

 松井氏が手がけた、国内外の企業やイベントのポスター、パッケージ、ロゴマークなどの作品200点以上を展示する。1970年代の「オロナミンC」のポスターや、フォント開発大手「モリサワ」の企業ポスター、ファッションブランド「ヒロココシノ」の案内状などが会場に並んだ。

 代表作の一つである、Apple社のパッケージのデザインシステム構築時を振り返るパネルも展示された。白い箱に黒い文字とりんごのマーク、製品写真のみのシンプルなパッケージは松井氏が発案したもの。それまで同社では、複数のデザイナーがそれぞれにパッケージ制作を手がけたためデザインに統一性がなかったといい、1984年、同社創業者のスティーブ・ジョブズさんから一貫したデザインシステムを作る依頼を受けた。

 松井氏は1970年頃に約3カ月間をかけて、イタリアやトルコ、アフガニスタン、インドなど世界各地を旅した経験が制作活動に影響を与えたと説明した。「Appleのパッケージの構築を頼まれた時に思い描いたのはアフガニスタンなんです」。着想はアフガニスタンの首都・カブールの砂漠だった。

 「11月だったので砂漠が水分を吸って凍って、歩くと『ミシッミシッ』というんです。それにびっくりして。砂煙が上がると思っていたのにそうではなかった。見渡すと、らくだが列をつくって歩いている」。白い砂漠とらくだがモノトーンの世界に見えたといい、「箱を白い画面としたら、そこをぶわーっとらくだが歩いている」と、パッケージのデザインに反映した。松井氏は「旅は1つのクリエーティブにつながる」と話し、刺激を受ける重要性を語っていた。

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