仏具のまち・高岡の伝統技術でプロレスの凶器製作 「仏像でぶつぞう」リングでついに無法使用!

杉田 康人 杉田 康人
リング上でついに使用された「仏像でぶつぞう専用仏像」(写真提供・まっする)
リング上でついに使用された「仏像でぶつぞう専用仏像」(写真提供・まっする)

 富山県高岡市で仏具の製造・販売に関わる約40人の若手組合「高岡伝統産業青年会」と、プロレスラーのスーパー・ササダンゴ・マシンが、凶器3点を共同開発。3月29日に東京・北沢タウンホールで行われたプロレス団体DDTの興行「まっする6―下北ONE PLUS ONE」で実際に使用された。

 400年以上続く彫金や漆工芸、鋳造など、仏具職人の伝統技術をぜいたくにあしらった「冥土in高岡」のパイプイス、仏像、半鐘(はんしょう)と木づちが〝プロレスの華〟凶器になってリングに登場。プロレスと伝統工芸の異色コラボが実現した。

 仏具製造シェアで全国ナンバーワンながら、寺院数の減少や発信力不足に悩む高岡市の伝統産業。課題解決のため、同青年会がササダンゴと同市出身でTBSラジオの人気番組「アフター6ジャンクション」の名物プロデューサー・橋本吉史氏に依頼した。

 「煽りパワポ」と呼ばれる試合前のSWOT分析(経営戦略や事業計画の現状分析)を得意技とするササダンゴは、橋本氏とともに同市の工場、工房を一日がかりで見学。職人たちとの戦略会議で、高岡市の伝統産業をどう盛り上げていくかを提案した。

 ササダンゴは「相手を冥土に送る」ことはレスラーと相性がいいとし、凶器に仏具職人の技をあしらい製作することを提案。彫金を施し、クッションを金襴緞子(きんらんどんす)と呼ばれる高級生地に貼り換えたパイプ椅子「―撲即是空―桐箱入り」や、後光が差す青銅色の仏像に真鍮パイプを取り付けた殴打用の「仏像でぶつぞう専用仏像」が完成した。

 ゴングも「本部席付近特化型興器(きょうき)半鐘と木槌」として半鐘で製作。鳴らす木づちは金箔(きんぱく)、金粉で蒔絵(まきえ)装飾をほどこした。興行では総合演出チームのお笑いタレント・ユウキロックとみなみかわが登場。凶器ならぬありがた~い「興器」として高岡市の伝統産業を観客にプレゼンした。

 ユウキロックは「凶器で反則」ではなく「興器で販促」のアイテムだとし、高岡が誇る伝統工芸に興味を持ってもらい、プロレスの楽しさ、面白さを演出するものだと説明。高額のため「決して壊してはならない」とクギを刺した。選手たちは試合で実際に手に取り、米人気団体・AEWへの遠征が決まっている竹下幸之介が「仏像でぶつぞう専用仏像」をさく裂。半鐘のゴングが鳴らされると、澄んだ音色にどよめきが起こった。

 新潟県で金型メーカー・坂井精機の代表取締役を務め、ものづくりの現場に携わるササダンゴは「高岡の伝統技術がプロレスで発信できたし、しっかり伝わったんじゃないでしょうか。選手も観客も喜んでいた。コロナで受注がなくなったり材料が高くなったり、ものづくりの現場はどこも厳しいが、突破口になれば。プロレスの幅の広さも見てもらえたと思う」と、観客の好反応に手応えを感じていた。

 高岡市出身ながら、地元が誇る伝統技術に気づかなかったというTBSラジオの橋本氏は、リング上でカクテルライトを浴びたパイプ椅子や仏像は神々しく輝き、選手なみの存在感があったと振り返る。

 「アプローチが変わると、技術力や良さ、魅力、もともと持っている良さを伝えられる。プロレス、伝統工芸といった伝統的に続いてきたものを、あえて新しい解釈を持って読み替えているという点でふたつはとても相性がいいし、コンセプトが合う。両者のコラボは本当にすごい」と、プロレスと高岡の伝統技術は〝最強タッグ〟だとした。

 パイプ椅子の彫金をほどこした高岡伝統産業青年会の和田瞬佑さんは「予想以上。試合を見て笑いが止まらなかった。ササダンゴ選手に〝凶器作ったらいいんじゃない?〟と提案を受けたときは本当に驚いたが、こんな派手な場所で使ってもらうと、高岡の伝統産業を活気づける」と地元産業の活性化に期待を寄せていた。

 仏具を製造する高岡でのものづくりの裏側を動画で見学できるツアー「高岡クラフツーリズモTV」では、今回の「興器」づくりの裏側もYouTubeで公開している。https://www.youtube.com/watch?v=TbVkZoRwVuc

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