“さわやかエッチ”というキャッチコピーが付けられると、思わずページをめくりたくなる男性は多いだろう。しかし、この漫画『20時過ぎの報告会』を一読すると、そうした期待とは裏腹に、心の中で「女性はこんなことを考えていたのか!」と叫びだしたくなるようなエピソードが連発する “男子禁制の一冊”と言える作品だ。
内容は、仕事や恋愛、人間関係などをテーマに1話完結のスタイルで、軽やかなストーリー展開と、胸にグッと突き刺さるフレーズを散りばめながら、女性のリアルを描いていく。もちろん、女性からの共感が多く、「モヤモヤした気持ちを言語化してくれた」など、新たなファンを生み出し続けている。
そんな作品を描いたのが、漫画家・イラストレーターのヤチナツさん(@11yc4)。女性をテーマにした作品を数多く手掛ける彼女は、どのような思いでこの作品を生み出したのか。ヤチナツさんのお話と共に、『20時過ぎの報告会』のエピソードの中から特に反響が大きかった作品をセクレトし紹介する。
彼氏ができないストレスから生まれた作品
幼少時から漫画を描くことが好きで、大学生の頃からWeb上に作品を発表し、社会人になってからも仕事の合間に創作活動を続けていたというヤチナツさん。彼女は、そうした歩みの中で、どのような漫画に影響を受けながら創作を行っていたのだろうか。「影響を受けた作品はいっぱいありますよ。幼いときに読んだ漫画の中から選ぶと、桜沢エリカさんの『シッポがともだち』や、いがらしみきおさんの『ぼのぼの』、よみながふみさんの『フラワー・オブ・ライフ』などですかね。エッセイ系や日常的なものが多いかも」。
今回、紹介する『20時過ぎの報告会』も、ヤチナツさんが影響を受けた作品と同じく、エッセイのように日常で起こった出来事を題材にしているが、どのようなきっかけで生まれたのだろうか。「社会人2年目ぐらいのときに、彼氏がほしくてむやみに動き回っていたら、かなりのストレスが溜まりまして(笑)。その発散と、共有をしたいという思いからこの作品を描き始めましたね。当初は、エッセイっぽい内容だったのですが、どこか感じの悪い作品になっていくので、フィクションという体裁にしました。もちろん、私の経験もめちゃくちゃ反映していますけど、あくまでフィクションとして楽しんでほしいなと」。
この作品の特徴のひとつが、女性のリアルをことごとく描写しているところ。その鋭い観察眼や視点について、ヤチナツさんは「(女性だけではなく)人間全般の内面が気になりますよ」と話す。「考え方の傾向やどうしてそう思ったのか、人格形成の背景、恋愛遍歴など、人が何を考えて生きてきたか。それが見えてくるのがすごく面白いんです。興味関心というより、そういう性格なだけかもしれません」。
「読み終わった後に世の中が嫌いになったり自分が嫌いになったりするよりは、多少は気分がマシになる漫画の方を私は手元に置いておきたい。だから、そこまで強く意識はしていませんが、暗い話はちょっと明るく、幸せな話は少し卑下してバランスを取るようにしていますよ」というヤチナツさん。多くの女性から共感を呼ぶ、この作品にはヤチナツさんのこうした思いが色濃く反映されている。
そして今後の作品については、「今ちょうど描いてみたいのは、悲しみも怒りも淡々と、演歌を抑揚なく歌うような、押し付けがましくないマンガですね。最近、躍動的なマンガを描いて疲れたので、バランスを取りたいです」と語ってくれた。“演歌を抑揚なく歌うような漫画”という表現こそ、カラっとしながら深部を突く、ヤチナツさんの世界観を表現しているように思う。その作品が発表される日が待ち遠しい。
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