なぜロシアはウクライナの原発を狙うのか 生物兵器の使用は?プーチン今どこにいる?専門家2人に聞く

深月 ユリア 深月 ユリア
ロシアがウクライナに侵攻(Negro Elkha/stock.adobe.com)
ロシアがウクライナに侵攻(Negro Elkha/stock.adobe.com)

 ウクライナに侵攻したロシア軍はなぜ原発を狙うのか。また、懸念される生物兵器の使用はあるのか。そして、ロシアのプーチン大統領は今、どこにいて、指揮を執っているのか。女優でジャーナリストの深月ユリア氏が、ロシアとウクライナの事情に詳しい2人の専門家に話を聞いた。

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 ロシア軍がウクライナに侵攻して、戦闘が激化している。ロシア軍は2月24日にウクライナに侵攻し、25日にチェルノブイリ原発を占領、3月4日にヨーロッパ最大級の原発であるサポロジエ原発を占領した。そして、3月13日、IAEA(国際原子力機関)のグロッシ事務局長は同12日の声明でウクライナより「ロシア国営の原子力企業・ロスアトムが、ザポリージャ原発を完全かつ恒久的に管理しようとしている」という報告を受けたことを明らかにした。ロシアは「管理するつもりはない」と否定しているが、ロシアがウクライナの原発に重きをおいて狙うのかなぜなのか?今後の戦況はどうなるのか?

 筆者は旧ソ連時代の陸軍学校出身で核兵器のミサイル搭載プロジェクトに携わり、三菱重工のモスクワ学術研究所の研究員や東京大学の講師を経て、現在も原発・核兵器の専門家として各地で講演しているアレクサンドル・カイリス博士と、ウクライナ人の国際政治学者アンドリー・グレンコ氏に見解を聞いた。

 なぜ原発を狙うのか、カイリス博士によると2つの理由があるという。「一つは仮に原発を爆撃したら膨大な放射能がヨーロッパを汚染することになるので、自分達の軍で占領したいこと。もう一つはウクライナの電力を奪うことです」

 グレンコ氏によると、「ウクライナのエネルギー源を掌握するためです。さらに、『ウクライナは原発で核兵器を開発している』というデマを国際社会で流す為のプロパガンダです」

 両者の見解は「ウクライナの電力を奪う」という点で一致しているが、実際にウクライナのエネルギー会社「ウクルエネルゴ」は9日、チェルノブイリ原発の電力供給が切断されたと発表した。

 また、グレンコ氏の主張するようにロシアは一部のメディアで「ウクライナが核兵器を開発している」と主張し、さらに10日、国連安全保障理事会に「ウクライナが生物兵器を開発しているので調査すべきだ」と要請した。

 このようなロシアのプロパガンダについてカイリス博士の見解を聞いたところ、「ロシアはウクライナについてさまざまなデマを世界中に流しています。『ウクライナにはロシア人だけ攻撃する蚊の生物兵器がある』『ロシア人にだけ感染させる新型コロナウイルスがある』など、めちゃくちゃです。ウクライナに微生物研究所はありますが、生物兵器研究所はありません。逆に、経済制裁と、予想より長期化する戦況により切羽詰まったロシアがウクライナにサリンなど化学兵器や生物兵器を使って『ウクライナがやった』と責任転嫁する可能性はあるかと思います」

 ところで、今回の戦争を始めたロシアのプーチン大統領は今、どこにいるのか?

 カイリス博士の見解によると、「プーチン大統領は現在、モスクワの豪邸ではなく普通の家に住んでいて、専用の核シェルター地下室にこもっているのではないでしょうか。昨今のプーチン大統領は極度に新型コロナウィルスを恐れて、極力、人に会わない日々を過ごしていました。家族とも離れて、プーチンに会える側近は6人しかいないといわれます」

 今回の戦争は日本に影響があるのか?

 カイリス博士は「北方領土近辺の津軽海峡のロシア軍演習は今回の戦争と無関係ではありません。日本で『中国脅威論』を主張する人たちが一定数いますが、それより恐ろしいのはロシアです」、グレンコ氏も「今までの対ロシア外交を根本的に見直し、ロシアを安全保障上の脅威と位置付け、それに備えるべきです」と注意を呼び掛けている。

 両氏の主張する通り、今回の戦争は日本にとって決して「対岸の火事」ではない。各国と連携し、外交戦略を練り直すべきだが、その際にいかに中国を味方につけるかもネックになってくるだろう。願わくはプーチン大統領が心変わりすることだが…。ウクライナ戦争は一刻も早く終結することを切に願う。

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