バレンタインデーの14日が近づいてきた。日本独特の風習として定着していた「義理チョコ」だが、近年は社会情勢の変化でその傾向は減少しつつあるという。それでも、職場での義理チョコを「人望」の証として、いや、それ以上に自分の「おやつ」として期待する妻から、その「成果」を問われた時に、手ぶらで帰宅した夫はどう対応したらいいのだろうか?「大人研究」の第一人者で、『大人養成講座』『大人力検定』など多くの著書を世に送り出してきたコラムニストの石原壮一郎氏が、その打開策をお伝えする。
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【今回のピンチ】
「毎年いくつかはもらえていた義理チョコが、今年はゼロだった。家に帰ったら妻に『チョコレートは?』と聞かれたが……」
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職場における「義理チョコ」は、あげる側にとっても受け取る側にとっても、けっこう微妙な代物です。とはいえ、本命チョコとはまったく縁がない多くの中年男性に、ささやかな喜びを与えてくれなくもありません。
しかし近年、義理チョコの風習は急速に衰退しつつあります。そりゃまあ、女性側にしてみたら、面倒だしお金もかかるし、それでいてたいして感謝もされなければお返しも期待できないとなったら、続けるモチベーションを保つのは難しいですよね。
さらに、そもそもが「異性」を強く意識せざるを得ない風習だけに、いろんなことに配慮が求められる昨今の職場状況においては、義理チョコを無邪気に楽しむことはできません。完全に「過去の風物詩」になるのは、もはや時間の問題と言えるでしょう。
いや、義理チョコの未来を心配している場合ではありませんでした。今年のバレンタインデーでは、こういうピンチに直面する人も多いでしょう。さて、どう乗り切るか。
もちろん妻に、悪意はありません。例年どおり、自分のおやつにしようと思って聞いただけです。勝手に屈辱感を覚えて「そんなのどうだっていいだろ!」と声を荒げたら、もらえなかったんだなと察した妻に、「八つ当たりしてくるなんて、どれだけ小さい男なの」と軽蔑されるでしょう。
正直に言えばいいとも限りません。
「今年はもらえなかったんだよね。いや、嫌われてるわけじゃないよ。たまたまだよ、たまたま。来年は期待しておいて」
こんな言い訳とも強がりともつかない言葉を並べたら、痛々しさが漂うだけ。だったら「えっ、何のこと? チョコレートがどうかした?」と露骨にとぼけたほうが、まだかわいげがあります。
ここは、何となく壮大っぽい話にしてしまうのがオススメ。
「いやあ、時代っていうのは、いつの間にか変わっていくんだなあ。義理チョコがウチの会社から消滅する瞬間を、まさか目の当たりにできるなんてね。なんか感動的だな」
本当に消滅したかどうかはさておき、ここまで言えば、自分がもらえなかった事実は、ちっぽけな問題になってくれます。
「ハハハ、2022年にもなって義理チョコを期待するのは、チョコっと遅れてるよ」
そうやっておやじギャグ混じりで笑い飛ばすのも一興。少なくとも、妻はこの話題を続ける気をなくしてくれるでしょう。
聞かれるピンチを未然に回避するために、帰りにコンビニに寄って自分でチョコを買う手もあるにはあります。しかし、店員からの冷たい視線に耐えたり、自分のやっていることの虚しさにさいなまれたりするぐらいなら、胸を張って手ぶらで帰るのが大人の潔さ。チョコの代わりに現実のほろ苦さを味わいながら、強く生きていきましょう。