金髪、つけまつげ、ピンク色口紅の「現代風ひな人形」 人気アニメで紹介後、用意した300セット完売

松田 和城 松田 和城

 「ヤングガンガン」(スクウェア・エニックス)で連載中の、福田晋一氏による漫画を原作としたテレビアニメ「その着せ替え人形は恋をする(着せ恋)」が、1月からTOKYO MXなどで放送されている。ひな人形の顔を作る「頭師」を目指す同作主人公の男子高校生・五条新菜は、人形工房「鈴木人形」(埼玉県・さいたま市岩槻区)の三代目・鈴木慶章氏(41)をモデルとして描かれている。第4話では、現代のひな人形には、金髪、つけまつげ、ピンク色の口紅などさまざまな種類があることが説明された。鈴木氏は、よろず〜ニュースの取材に対し、アニメ放送後、注文が殺到したことを明かし「今シーズン用に製作した現代風ひな人形『Bell's kiss』シリーズは、300セットすべて完売してしまいました」と話した。

 「現代風ひな人形」の特徴は髪型だけでない。若者が着るようなデザインを模倣したドレス地を十二単と組み合わせた衣装。比較的狭い住居が多い現代でも気軽に飾れるよう、コンパクトなサイズ感の人形を創作するなど伝統に縛られない新たな試みを続け人気を博している。昨今、全国的に伝統工芸・産業のものづくりにおける市場縮小の傾向を打開するため、若い世代に興味を持ってもらおうと、約7年前から「現代風ー」の製作を始めた。「金髪や、まつげ付きの人形は、若いママさんなんかにはとても人気ですね」と手応えを得ている。同作アニメ化の影響力も実感しており、「作品ファンの方が買っていかれるのがすごく多いです」とうれしそうに話した。

 当初は「おもちゃのような雰囲気になっちゃうのでは」「従来と大きく変わりすぎて逆に売れないんじゃないか」など、挑戦を疑問視する声も同工房であったという。「当然といえば当然だと思います。金髪のおひなさまとかは突拍子もないですからね。こちらの情熱を伝えながら、折り合いをつけて開発していきました」と振り返った。

 同氏は、大学時代から人形師になるための練習を始めた。26歳から伝統工芸師として働き、年間約4万体もの人形を創作している。「着せ恋」原作コミックス発売の約1年前に作者、出版社から主人公のモデルになることを打診され、数回の取材を受けた。作中では、人形をはじめ、製作の模様、職人の情熱が美しく描写されている。「実際に工房を案内して、人形の作り方などをかなり細かくお教えさせていただきました。そのおかげでかなりきれいに描写していただいている印象です」と満足そうな表情をみせた。

 同氏は、作品を通じてひな人形の魅力が広まることに期待する。「実際に『人形のまち』岩槻に来ていただきたいです。私も『アニメで取り上げられるくらい人形って魅力的だな』と少しでも思ってもらえるようなお人形作りを今後もしていきたいなと思います」と言葉に力を込めた。

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