古本をこよなく愛し、全国各地に点在する個性ある書店やイベントに足繁く通う熱狂的なファンたち。“古本好き”といってもその中身はさまざまで、高額な古書に情熱を傾ける者もいれば、あるジャンルを探求するため絶版本などを買い漁る者もいる。
そのなかで、BOOK-OFFのような新古書店を愛し、古本探しの面白さを鮮やかに描く、漫画家の大石トロンボさんの漫画が一部の古本ファンから人気を集めている。そこで今回は、古本愛や新古書店愛にあふれ、読書好きから絶大な共感を得る短編漫画『本にまつわる短編集』と、大石さんのインタビューをお届けする。
本好きにしかわからない。コアな“あるあるネタ”で共感を生む。
幼い頃からの夢だった漫画家の道をあきらめきれず、サラリーマンとして働く傍ら、2016年頃から漫画を描くようになったという大石さん。漫画の特徴である、ぎっしり詰まった情報量をさらりと読ませる作風は、ある漫画家の作品を読み解くなかで辿り着いた。
★『とある新古書店が閉店する日』
「福満しげゆき先生の影響ですね。エッセイ漫画では、『文字がすごく多いのになんでこんなに面白いんだろう』と考えていたときに、気付いたんです。自分の思考の中にある細かい部分や恥ずかしい部分を隅々まで言語化することが面白さなんだと。それ以来、無理にセリフをシンプルにせず、考えをしっかり言語化しようと意識したことが、漫画の勢いにも繋がって今の作風になっていきました」
★『床抜けに怯える男』
SNSでは、今回紹介する作品のほか、古本戦士の戦いを描いた漫画『新古書ファイター真吾』などを発表している。一見すると、“古本愛を追求する漫画家”と思われがちだが、大石さん自身はそれとは異なるスタンスで作品を描いていると話す。
★『ブックオフに行けない夜に』
「いわゆる古本マニアの方々が持っているようなディープな知識はありません。希少な本にそれほど興味があるわけではなく、新古書店での現象に魅力を感じています。だから、いま描いている作品についても、本好きの方ならわかってもらえるような細かい部分の“あるあるネタ”をフィクションやエッセイとして描いているんです」
★『ある中年本好きの悟り』
この思いによって描かれた作品が多くの本好きの心に届いたことで、BOOK-OFFの魅力を論じた書籍『ブックオフ大学ぶらぶら学部』(2020年/夏葉社)をはじめ、BOOK-OFF30周年記念公式サイト「ブックオフをたちよみ!」に漫画を寄稿するなど、ますます活躍の場が広がっている。
★『個性のある新古書店を見て思うこと。』
大石さんは、今後も「本にまつわる狭い範囲の漫画を描く専門漫画家であり続けたい」としながらも、新たな展望について次のように語る。「いつか本とは関係のない漫画を描きたくなるかもしれません(笑)。その作品を発表した時にそのこと自体が話題になるくらい、本のテーマを描き尽くせたらうれしいですね」。独自の路線を追求していくなかで、次はどのような作品を生み出してくれるのだろうか。これからの活動にも注目していきたい。
■■大石トロンボさんのSNS
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https://note.com/trombook